第9話 ぷりんのしたい事

 真宙は、目の前でくつろぐこの魔導少女の扱いに正直困っていた。彼女はベッドに横たわると、天井を見つめながら今後に事について考え始める。

 まず、どうして自分が彼女を呼び出してしまったのか――その理由すら分からない。何もかも分からない中で、今ここに正体不明の少女ががいると言う事実だけが存在していた。


 真宙は横を向くと、ちょこんとクッションの上で女の子座りのまま返事待ちをしているぷりんの様子をじっと見つめる。


「ねぇ、ぷりん」

「はい」

「あなたは、何がしたい?」


 召喚主からの問いかけに、彼女はコップのジュースを真顔のままストローで飲み始める。ただ、すぐのその行為を止めたのは中の分量の減りがすぐに収まった事でも明らかだった。真宙に見つめられて緊張しているのだろうか。

 真宙と目が合ったところで、ぷりんはストローから口を離す。


「あのね、私はこの世界を楽しみたい。だって楽しみだったんだもん」

「向こうの世界は退屈だったの?」

「そうそう、すごく退屈だったの! 聞いてよ!」


 その後、真宙はぷりんの愚痴を延々と聞かされる羽目になってしまった。淀みなく繰り出されるその言葉の洪水を、真宙は右から左に受け流していく。そのほとんどは下らない内容だったのだけれど、たまにすごく重要な話も混じっていた。

 ただし、それを遥かに上回る愚痴がすぐにその情報を上書きしてしまい、結局記憶に残ったのはぷりんがすごく退屈していたと言う事だけだった。

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