こえのする方へ
ライ月
第1話 こえのする方へ
「あ」
高く打ち上げられたボールを見て、メイはやばい……と思った。
彼女の予測をはるかに超えて、ボールは高度を落とさずフェンスを越えて、裏山方面へ。経験則からして多分車道まで行ってしまったらしい。
「おい、少しくらい加減しろよ」
「ばーか、お前がとろい球投げてっからこうなるんだよ」
「おい、このくらいで喧嘩するなって……メイ! ちょっと取りに行ってくれないか!」
ピッチャーとバッターが口論する横で、キャッチャーがメイに声を張る。彼らは少年野球団に所属し、近々練習試合が控えているらしく気合が入っているのだ。
「……もー!」
フェンスに一番近い彼女は校門を飛び出し、道を横切った。○月の日曜日なので、人通りも車も少ない。
――どこだろ?
きょろきょろと首を回し、当たりをつける。多分方向的にはこっちだ……と、近くの駐車場のなかへ足を踏み入れた――が、ない。
「どこ……」
田舎の学校、その学区内。当然暮らしている人たちもまるでない。途方に暮れた。
無かったと、戻って伝えよう。一人じゃ無理だね……これは――と、やれやれと首を振った。
メイが踵をかえそうとしたとき――、
「こっちへおいで」
「こっちにあるよ」
「――え?」
『こえのする方』に顔を向けると、赤いボンネットの上で日向ぼっこをしている2匹の蝶が止まっていた。
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