第45話 スポーツにおける「日本ブランド」

今、スポーツ界で大騒ぎになっている事件がある。


テニスの世界4大大会の一つ。

全仏オープン・女子ダブルスで起きた失格判定が、

全テニス界を揺るがせているのである。


事件の内容であるが。


女子ダブルス3回戦第5ゲームで

インドネシアのアルディラ・スチアディとペアを組んだ加藤未唯が

アルディラがリターンミスしたボールを相手コートへ打ち返した際に、

相手ペアへボールを渡しに来ていたボールガールの頭部に直撃させて

しまったのである。


加藤はすぐにボールガールに謝罪しに行き、

主審も警告を出してプレー続行となるはずだったが、

相手ペアが執拗に抗議した結果、

「危険行為を行ったため、失格とする」とジャッジが変更された。


加藤・スチアディ ペアはビデオによる検証を要請したが

認められなかった。

加藤は自分の行為によって失格になった事がショックだったようで

泣きながらコートを後にした。


そして、全仏オープン運営から加藤に対し、

「今大会で獲得した賞金とATPポイントを剥奪する」と

通知されたのである。


この裁定に対し、全仏オープンに参加している女子プレイヤー、

すでに引退したレジェンドプレイヤー、テニスメディアの有識者などから

猛烈な批判が巻き起こっている。


加藤自身も失格の裁定はともかく、賞金とATPポイントの剥奪については

運営側に不服申請を出したとTwitterで発信している。


今回の騒動が、ここまで大きく波紋を広げた原因は何だろう?


私は、「事件の当事者が日本人であった」からだと思うのである。


スポーツ界における「日本人」プレイヤーの世界的認識は

「礼儀正しく、常にフェアプレーを心がける尊敬できるアスリート」

と言う物である。


サッカーでも、ラグビーでも、ワールドカップや世界選手権などの

大きな大会で何度も「フェアプレー賞」を獲得している日本代表。

勝つためには手段を選ばない他国の選手・代表とは一線を画した

そのプレーは世界的に称賛されているのである。

(また、彼らを応援するサポーターの行動も注目され称賛されている)


これを今回の事件に当てはめてみると。


「礼節とフェアプレーを重んじる日本人である加藤が

ボールガールに対して危害を加える意図をもって打ち返す事など考えられない!」


これが、今回の裁定を批判する人々の共通認識だろう。

だからこそ、今回の理不尽な裁定に怒りを爆発させているのだ。


もう一つ、私が気になっているのは主審の対応だ。

加藤・スチアディ ペアがビデオ検証を要請した時、

「裁定は下された。アンラッキーだったね。」と言って

加藤ペアの要請を一顧だにせず裁定を確定させたのである。


対戦相手はチェコとスペインの選手。

加藤ペアは日本とインドネシアの選手。


この試合は、白人 対 有色人種と言う図式だったのだ。


おそらく無意識だとは思うが、

「白人優越主義」が彼の中にあって

有色人種の加藤ペアの要請を認めなかったのかも知れない。

とは言え、プレイをジャッジする主審は人種などに関係なく

公正でなければならないのだ。

その点から言えばこの主審は「不適格」と言うべきだと思う。


21世紀になっても残る、アメリカ・欧州のアジア蔑視。

普段は隠すことが出来ていても、ちょっとした事で露呈してしまう。

非常に残念な事ではあるが、そういった感性を持った人々がいると言う事を

認識しておくべきだろう。


少々、論点がずれた。


今回の騒動は、

「当事者が日本人だから大事おおごとになっている」のではないかと

私は思っている。


今まで各種の競技で日本代表や、その他の選手たちが

世界各地で見せつけてきたフェアプレーや

対戦相手に対するリスペクト。

何十年も積み上げてきたそれらが今回の事件に関しての

反応に繋がっていると思うのである。


礼節を重んじ、フェアプレーを貫き、対戦相手をリスペクトし、

競技に真摯に向き合う。


これこそが、スポーツにおける「日本ブランド」だ。


未来においても、このブランドが維持・継承されていく事を

切に願っている。




今回はここまで。

























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