第19話 「前公爵 クラウス・オストレーベは暗躍を楽しむ」 1
最近は色々と些末な事柄が重なり書くことが億劫になっていたのだが…。
ある作品を読んで刺激を受けたと言うか。
その作品のアナザーストーリー的な物を書いてみたくなった。
と言う訳で、今回は 熊吉(モノカキグマ) 様の
作品の世界観を下敷きに短編を書いてみようと思う。
二次創作の規定に抵触しないように、あくまで「参考」として
世界観を「模写」させて頂いたものであることをご了承して頂きたい。
では、始めよう。
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「前公爵 クラウス・オストレーベは暗躍を楽しむ」
西に続く道に乾いた風が吹き抜ける。
騎乗した貴族の後に続くのは前線に補給を届ける荷駄隊。
その数は馬車、200台。
1万人の師団なら2ヶ月分の食糧その他を賄える量である。
この部隊が西進している理由は
突如侵攻して来た西側の大国、バクラ王国に反撃する
帝国軍への補給のためだ。
バクラ王国軍は電撃的に帝国南西部へ侵攻。
そして南西部最大の都市、
ポルスカを20万の大軍で包囲してしまった。
そこは帝国の南西部を治めるポルスカ公爵の領都であり
各種産業の集積地でもあったのだ。
加えてポルスカ公爵は選帝侯の一人。
もし、占領され公爵が囚われでもすれば
帝国の威信は地に落ち周辺各国への影響も計り知れない。
よってただちに奪還軍が編成されポルスカへ向かう…
とはならなかった。
何しろ相手は20万の大軍である。
こちらも相応の兵を動員しなくてはならない。
それでも10日をかけて15万を動員しポルスカへ向かい
バクラ王国軍と対陣することになったのである。
ポルスカが包囲されてすでに半月が経っていた。
帝国軍は皇帝マルティネス4世が親征し、それに公爵家を筆頭に
数多の貴族家が参陣している。
すぐにでも総攻撃で解囲をすべし。
いや、敵の補給切れを待つべし。
帝国軍の軍議は紛糾した。
皇帝が判断し下命すれば片づく問題なのだが
そう簡単にはいかなかった。
この帝国は6選帝侯(公爵家)の互選によって皇帝が選出される
言わば連邦国家だ。
皇帝は国の代表者に過ぎず、何かをなそうとするには
各公爵に根回しをして調整しなくてはならない。
皇帝はそれなりの強権を持つとは言え各公爵家の顔色を伺いながら
治世を進めなくてはならないのだ。
さらに紛糾を深める種もある。
マルティネス4世が高齢であり次の皇帝選挙が
いつ行われてもおかしくない情勢だ。
現在、次期皇帝の有力候補として
南西部を治めるポルスカ公爵と南東部を治めるザビネ公爵が
挙げられている。
その片方、ポルスカ公爵が領都で包囲された。
ザビネ公爵にとって今回の出来事はライバルを蹴落とす千載一遇の
チャンス到来。
対陣を長引かせればポルスカ公爵の勢力を削り取ることが出来る。
そうすれば次期皇帝選挙での勝利が近づく。
ザビネ公爵はそう判断していた。
すぐにでも総攻撃を!
そう主張するのは最年少公爵、エドワード・ノルデン。
彼は帝国北部を領地としている。
父公爵が他界したとき彼は12歳。それから2年経った現在は
先代から仕える家令や家臣、親族の支えもあり領地を発展させて
帝国内でも指折りの権勢を誇るまでになった。
彼は若者らしい正義感と理想でザビネ公爵に挑む。
「貴族は民なくして生きてはいけない。
その民が苦しんでいるのを救わずして何が貴族か!」
ザビネ公爵は
「敵とは5万の兵力差がある。
今、攻撃すれば勝利しても損害は多大なものとなるだろう。
それに敵は,あとひと月もすれば糧食が尽きて撤退するはずだ。
損害を出さずに取り返せるならばそれに越したことはない。」
包囲下の兵や民の事を全く考えない手前勝手な主張を返す。
エドワードは歯嚙みしたが他の公爵たちは
ザビネ公爵におもねるばかりだ。
マルティネス4世もザビネ公爵に強く出られず
結果としてバクラ王国軍との睨み合いを続けるほかなかった。
対陣して1ヶ月。
ポルスカから伝令が帝国軍陣地に駆け込んできた。
「領都では食糧が底をつき始め、兵も民も士気が落ちております。
一刻も早い救援をお願い致します。」
そう言い終えると彼は倒れ息絶えた。
彼の背中には敵の矢が突き立っていた。
その場に居合わせたエドワードは軍議の席で
「攻撃しないと言うなら、せめてポルスカへ糧食を補給すべきです。
このままでは戦わずして占領される事になりかねません。
お許しがあれば我が領軍のみでやって見せましょう。」
ザビネ公爵は渋ったがマルティネス4世の裁可で補給作戦は決行された。
ノルデン軍は包囲の一番薄い場所を突破。
ポルスカへ馬車150台分の糧食を補給した。
損害はおよそ10%と言う奇跡的な成功である。
これはバクラ王国軍が油断していた事と
ポルスカ公爵軍が打って出た事で
挟撃する形になった敵部隊を短時間で撃破出来た事。
そして、前オストレーべ公爵。
クラウス・オストレーベの暗躍があった。
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