第14話 ウクライナ戦争について思う事。
2022年2月24日。
ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始。
まさか?
直接、軍を動かすとは思わなかった。
ウクライナ東部の2州を独立させ傀儡政権を樹立。
そこを梃子にウクライナの経済的弱体化を狙い
西側NATO諸国へ強い警告を発する。
さらにウクライナ国内の世論分断を誘って
親ロシア政権を樹立させる事。
これがロシアの戦略だと私は思っていた。
大規模演習などの軍の行動はあくまで示威行為で
実際の侵攻はないだろう。
だが、気になる情報もあった。
20隻を超える極東ロシア艦隊が
2月21日ごろ、オホーツク海から北太平洋にかけての海域で
演習を行ったと言うのだ。
時期的に考えると
ウクライナで行動を起こす時に介入してくるかもしれない
アメリカを牽制したのだろう。
(もっともバイデン大統領はそれ以前にアメリカ軍の介入は無いと
表明していたが)
ウクライナと極東。
遠く離れた二地域で行われた軍事演習。
非常にきな臭いと感じていた。
そして、ウクライナ東部2州の独立宣言とロシアによる即時承認。
ここまでは予想通りだったのだが、
軍事同盟締結と即時発効は予想外だった。
ロシアの大義名分としては
「同盟国がウクライナから攻撃を受けている。
同盟に基ずき同国を防衛する為に軍事介入を行う。」
と言うものだ。
しかしながら、ロシアの本音は
「NATO勢力がウクライナまで及ぶのは容認しがたい。
何とかしてウクライナのNATO加盟を阻止して
自国の安全を確保しなくてはならない。」
と言う事なのだ。
ソビエト連邦崩壊に伴って加盟各国は独立した。
さらにソ連の影響下にあった東欧諸国も自主性を回復して
独自に国家運営を行うようになっていった。
ロシアは面積と核戦力こそ大国だが、経済的には大幅に退潮して
世界に対する影響力を減少させることとなった。
各国は当てにならないロシアより、豊かな西欧諸国への憧憬を強め
西欧へ接近する道を選んでいく。
すでに西隣のポーランドはNATOに加盟している。
ここでウクライナまでNATOに加盟すれば
NATOとロシアは前線を接する事となってしまう。
つまり、NATOが直接ロシアを攻撃出来る橋頭堡を
手に入れる訳だ。
(実際に攻撃するかどうかは問題ではない。
その可能性が存在すること自体が容認出来ないのだ。)
ではなぜウクライナはNATO加盟を申請したのか?
これもウクライナ側の安全保障政策の一環なのだと思う。
東部2州は8年前からウクライナからの独立を求めて
武装闘争を展開している。
この2州はウクライナの経済的中心と言ってもよく
工業・鉱業が発展している。
そこを親ロシア勢力に占領されていて
ロシア軍から援助を受けている武装組織が攻撃を続けている。
ウクライナとしてみれば
最悪、2州の独立・傀儡化を認めるとしても
その他の地域を失う訳にはいかない。
東部2州から侵攻してきたときに
国土を守る手段が必要だ。
そのためのNATO加盟なのだ。
NATO加盟によって親ロシア勢力の侵攻をあきらめさせる。
これがウクライナの戦略だった。
ところが。
ウクライナが申請して、
未だ承認されていないタイミングで侵攻が始まった。
NATO加盟後であれば
米・英・仏・独を中心としたNATO軍との
全面戦争に発展するのは間違いない。
だから、ロシアは
「侵攻のタイミングは今しかない」と判断したのだろう。
侵攻のニュースを聞いた時。
「ウクライナは抵抗するが、長くは持たないだろう。」
と悲観していた。
ロシア軍は万全の準備を整えていただろうし
戦力的な面からみてもウクライナ軍を圧倒しているはずだ。
しかし、現実には侵攻7日目を迎えても
首都キエフはおろか第二の都市ハリコフも占領できていない。
さらには制空権も確保できていないと言う。
ウクライナ軍の抵抗が予想以上であったのと
ロシア軍の攻撃が民間人の犠牲を恐れて
限定的になっている事も影響しているのだろう。
さらには
物資の補給が滞っていること。
作戦参加部隊の多数が若年兵で練度と士気が低いこと。
ウクライナ全国民を挙げてのパルチザン・ゲリラ戦の展開。
これらがウクライナを持たせていると思われるのだ。
ロシアとしては侵攻開始から48時間以内、
最悪でも72時間以内にキエフを制圧できると想定していたと思う。
戦略的な奇襲を行い
圧倒的な軍事力を見せつけることで戦意を打ち砕き、
ほぼ無抵抗でキエフを占領する。
これがロシアの作戦想定だったはずだ。
奇襲のための偽装として
ベラルーシとの大規模軍事演習を行ったりしている。
その際にどれほどの物資を持って行ったのか?
弾薬・燃料は通常の演習と変わらない量しか
用意していなかった可能性がある。
明らかに通常より多く集積すればアメリカ他の偵察衛星によって
侵攻準備が察知されてしまう。
それに想定では戦闘はほとんど発生しないと考えられていたはずで
演習後、部隊に十分な補給がなされなかったかもしれない。
(演習後、わずかな日数で侵攻が開始されている事を考えると
その可能性は低くない)
部隊の練度が低いのも「演習」と言う偽装ゆえかも知れない。
演習は部隊練度を上げる為に行うものだ。
そこへ精鋭部隊を送り込んだら、当然、警戒される。
だからあえて、錬成途中の部隊を演習に参加させた。
戦闘は無いのだから「張りぼて」の部隊でも十分だろう。
こんな思惑がロシア軍上層部にあったのではなかろうか?
しかし、現実にはロシア軍の戦略的奇襲は功を奏しなかった。
なぜなら、ウクライナは侵攻がありうると予測し
準備をしていただろうから。
8年前から続く武力紛争。
いつロシアが介入してもおかしくない状況が続いていたのだから。
ウクライナはそれに対抗する準備を怠らなかったのだ。
故に現在も頑強に抵抗できている。
ロシア軍が若年兵ばかりだというのも気にかかる。
軍というのは一面では社会的なセーフティーネットでもある。
仕事がない者たちを軍に吸収し社会不安をやわらげる。
これは発展途上国だけではなくアメリカも取っている手法だ。
(陸軍・海兵隊の一般兵には、市民権を持っていれば志願することができる。
貧困層から衣食住の確保を求めて志願する者も少なくない)
これをロシアに当てはめると。
私たちが思っている以上にロシア国内の経済状況は
危機的な状況なのではないだろうか?
若年層の失業者が軍に吸収されなくてはならないほどに。
そして、今回の作戦に駆り出されたとしたら?
衣食住の確保を目的に軍に志願したとしたら
「戦闘なんて真っ平御免。」だろう。
しかも、自国防衛のためならともかく
侵略者として戦うなんて……。
ネットからの情報であるが
前線部隊でも命令に対して反抗したり
サボタージュする者も多いようである。
現状を見てみると
ウクライナはロシア軍に抵抗する挙国一致体制の構築に成功した。
対するロシアは低い練度・士気に加えて補給が滞り、
十全な戦闘力を発揮できていない。
しばらくは戦線は膠着状態となるだろう。
その間に停戦交渉などがまとまればいいのだが。
ロシアが要求している
「ウクライナの非武装中立化」などは
ウクライナは容認できない。
交渉はまとまらず散発的な戦闘が続く事になると思われる。
あるいは。
プーチンが禁じ手を使って事態を打開するか?
可能性はごくわずかだが、「あり得るかもしれない。」
と思っていた方がいいかもしれない。
今回のウクライナ戦争から私たちが学ぶ事はなんだろうか?
「戦争とは、こちらがどれほど望まなくとも
相手側が望めば起こるものである。
それに対する準備を怠ってはならない。」
と思う次第。
今回はここまで。
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