第2話 たまゆら堂4
本当はシラバミに相談するなんて嫌だったが、ウツギがなにを思っているのかトウカには分からないのだから仕方がない。
こんなときにヒサゴがいてくれたらと思う。鎖につながれた優しい少女にならば相談ができたのに、もういない。そうなると、トウカが頼れるのは不本意ながらシラバミくらいなものだった。
「ウツギの考えていることが分からないんです。最初は私があやかしを拒絶したから彼を怒らせたと思ったんですけど、そうじゃないみたいで。私が近づこうとすると、余計に苦しそうな顔をするんです。シラバミさんなら、ウツギがなにを考えているのか知っているんじゃないですか」
「うーん、知っているけど――、秘密」
人差し指を唇につけてシラバミは微笑んだ。わずかに開かれた瞳には妖しい色が灯っていた。
「大切なオトモダチのことを簡単に話すわけにはいかないだろう。ボクもウツギくんには嫌われたくないからね」
だが、そう言ったあとで顎に手を当てる。恐ろしいほどに白い肌だ。
「そうだなあ――、でも今のトウカちゃんを見ているのは愉快だから、すこしだけ助言をしようか。きっかけはたしかにそれだった。君が自分の瞳を嫌いだと言い、あやかしのことも嫌いだと言ったこと。ウツギくんはとっても傷ついたんだよ」
「でも、それならどうして私が近づこうとするのを嫌がるんですか」
「さあて。それは君が自分で気づかないとね。すべて他人から与えてもらえると思ったら大間違いだよ」
そこでシラバミは顔をトウカに寄せた。吐息が耳にかかる。動けないトウカの耳元で囁くようにして、
「もう一つだけ、教えてあげる。トウカちゃんはウツギくんに用心しなくてはいけないよ」
「――殺されるから?」
以前シラバミが言っていた。このままだと、いつかトウカはウツギに殺されると。
ふふっとシラバミは楽しそうに笑い声を上げてトウカから離れる。
「そう、よく覚えているね。えらいえらい」
からかうような口調にトウカの眉が寄る。
やはりシラバミのことは好きになれそうになかった。この男に付き合っているよりは、ウツギとマガミというあやかしのところに行った方がましに思えた。
――というか絶対あっちの方がいい。
だが、最後に一つだけとシラバミに向き直る。
「質問変えていいですか」
「答えるかどうかは分からないけど、聞くだけ聞いてあげよう。どうぞ」
「シラバミさんは、なにを考えているんですか。私にはあなたの考えていることも分かりません」
トウカの言葉に、シラバミは無邪気に微笑んだ。
「ボクはただ楽しいことを求めているだけだよ」
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