P6 夏ツバキ肩にぱさりと〜少しでも光の当たる場所へ行け
夏ツバキ肩にぱさりと落ちたとき
キミに油をさされたような
夏椿は沙羅の花とも呼ばれる晩夏の季語です。「夏ツバキ」と表記したのは「夏椿肩」と漢字が三つ並んで見づらくなるのを避けるためです。手のひらサイズの椿みたいな白い花が咲き、椿のように散らず丸ごと落ちてきます。花が多いので木の下を通るとけっこう落花にぶつかります。
花を元気のバロメーター、白い花をキミの象徴として伏線をしいてきたのは述べてきたとおり。夏椿の実から油を取ることはないのですが、ツバキをカタカナで強調したついでといいますか、連想ゲームで感じてほしいなというところです。花が落ちてきてキミに肩を叩かれたようでハッとする、という情景を描きました。
青空が剥がれ落ちたら
弊社のお墓参りをしよう
千鳥草は晩夏の季語。園芸をするかたにはデルフィニウムと言ったほうが伝わるかもしれません。花色はいろいろありますが、空を思わせるものが多いです。スティック状にびっしり咲いて、淡い色むらもあるので、たくさん植えると本当に空が落ちてきたような光景になります。あの爽やかさを借り、元気を取り戻してきた作中主体を表現しようとしました。
「初心者は空剥がしがち。これは上手くいっているけれど」と言われて冷や汗をかきました。初心者(歌歴二年)なので知らず本気で空を剥がしました。
また、久しぶりに元弊社が出てきた歌でもあります。ずっと目を背けてきたものと相対する元気が出てきた作中主体の表現です。「弊社のお墓参り」は潰れてしまった弊社の空きテナントや廃ビルを見に行くと取っても、労基署などに未払い残業代などの手続きをしにいくと取ってもオッケーです。
少しでも光の当たる場所へ行け
白朝顔に上げる親指
今度はワードファイルではない白朝顔がでてきます。これが明確にキミの象徴となるよう、がんばって伏線をしいてきましたが、伝わっていたらとっても嬉しいです。
朝顔のつるは負の重力走性(重力に逆らって進む習性)がありますが、不思議なことに花芽のついた枝は正の走光性(光に向かって進む習性)を示します。朝顔のグリーンカーテンなどが近くにあるかたは、示し合わせたように同じ方を向いて咲く朝顔に見覚えがあるのではないでしょうか。本当に少しでも光の当たる方へ行くのです。
さいご作中主体にどんなことをさせるか言わせるか悩みましたが、仁王立ちするようなアラサーはサムズアップかな! と最終的に勢いで決めました。作中主体はずっと感情を表すような行動を避けてきましたが、ここでやっと心からの仕草をします。そのカタルシスでみなさんの心にさざなみを起こせていたら、それほど嬉しいことはありません。
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