9章

プロローグ




 ロレアムド・アザイラス。


 魔物の王。


 負の感情の神。


 こいつとの付き合いも長い。


 ついに決着の時だ。


 しかし、その決着は俺の負けになりそうだ。


 思い返せば、初めて会った時のこいつは大人しかった。


 今、目の前に対峙しているこいつからは大人しさを感じない。


 凄まじい殺気。


 空間に広がる奴の不気味な笑い声。


 万象のクリムゲルが慣れさせようとした理由がわかった。


 ただ対峙しているだけで意識が飛びそうになる。


 万象のクリムゲルより気配が凄まじい。


 呼吸が苦しい。


 はじめてこいつに会ったとき、俺には確信があった。


 こいつには勝てないという確信だ。


 その時は声を聴いて確信した。


 今、こいつの殺気、笑い声を感じて思う。


 やはり俺達は勝てない。


 今に至っても結論は同じ。


 隣にいるアルコルも同じ事を感じている筈だ。


 どう考えても勝てそうにない。


 力の差は歴然だ。


 どうしようも無い。


 勝てない。


 勝てそうもない。


 だが、逃げない。


 最後までやる。


 覚悟は出来ていた。


 残念だが。


 感覚的に無理そうでも、足掻けばなにか奇跡が起こるかもしれない。


 その可能性に縋るしかない。


 俺達二人がここに辿り着くのに、仲間には苦労を掛けた。


 俺達二人には把握できていないが、死んだ奴もいるかもしれない。


 無駄には出来ない。


 最後までやる。


 ロレアムドの声を聴いて、恐怖が全身を駆け巡る。


 怖い。


 逃げたい。


 ロレアムドは話し出す。


 ロレアムド:「どうした?」

 ロレアムド:「ここまで辿り着いたのだろう?」

 ロレアムド:「何を躊躇う事がある?」

 ロレアムド:「情けないやつめ」


 こいつ。


 勝手な事言いやがって。


 俺はお前を、実は殺したくないんだぞ。


 喋るのが億劫だ。


 めんどくさい。


 が、しゃべる。


 レイセ:「お前、俺の仲間に成らないか?」


 ロレアムド:「ハ、ハ、ハ、ハ、ハ、ハ!!!!!」


 レイセ:「なにがおかしい?」


 ロレアムド:「初めての回答だ」

 ロレアムド:「俺は、長い間、倒されるのを待っていた」

 ロレアムド:「俺を倒して、真実をつかみ取れ」

 ロレアムド:「お前には期待している」


 アルコル:「御託はいい、こちらから行かせてもらう!」


 アルコルの斬撃がロレアムドに向かって飛ぶ。


 戦いは始まった。


 今自分に出来る事を最大限やる。


 出来る事は限られている。


 道は険しい。


 希望は有るのか?



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