第8話 暴露大会

 キシ:キシ・ナトハ・ソアミ・カジャー。

    『リーベラティーオー』の纏め役。

    プロンシキの元英雄。

    死兵使い。

 ジャド:『マギ』のメンバー。



(視点はキシです。)


 結構長い時間飲んだ。


 こんなに飲んだのは久しぶりだ。


 ジャド、彼は自己主張が少ない。


 自分を良く見せようとする部分が無い。


 そして、会話の距離感が抜群に上手い。


 僕は話したい事をスムーズに話せた。


 まるで年下になったかのような気分だ。


 彼にはあまり先輩ぶるのはやめておこう。


 恥をかきそうだ。



 たくさん飲んだ。


 でも飲み過ぎで介抱されるとか、そんなのは無い。


 二人ともほどほどだ。


 多重契約について聞けたのは貴重だった。


 その話はまた今度。


 飲んでいる間に『復讐者』から連絡が有るかと思っていたが、無かった。


 明日はダンジョン攻略だ。


『復讐者』の替わりはベリーに頼もう。


 夜中にフレイズに連絡をして、その日はホテルで休んだ。




 次の日。


 朝。


 朝食を食べ始めようとした時、ジャドが来た。


 迷わず僕の前の席を確保する。


 特に約束はしてなかったんだが。


 毎日顔を合わすとうんざりしないのか?


 僕相手に物怖じしないとは、変わった奴だ。



 キシ:「やあ」


 ジャド:「おはようございます」


 キシ:「無理に付き合わなくて良いんだよ?」


 ジャド:「?」

 ジャド:「ああ、別に気になりません」


 キシ:「前言撤回」

 キシ:「少しは先輩を気にしろ」


 ジャド:「はー」



 メニューは、パンとスープ、卵とソーセージ、サラダ。


 バイキング形式で、自分で取って好きなだけ食べる。


 二人無言で食べた。




 新生ロベストロニア帝国のダンジョンは、低階層に普通に罠があるタイプのダンジョンだ。


 六十階層で融合者や契約者の人数が制限されない。


『リーベラティーオー』関係国のダンジョンはこのタイプばかりだ。


 僕にとっては都合がいい。


 死兵を人数に入れることが出来る。


 これもまた運命の一言で片付ける気なんだろ。


 手加減されている様で腹が立つ。


 が、文句を言っても始まらない。


 上手く立ち回る。




 ダンジョンの入り口は広場になっている。


 入り口で人数が揃うのを待つ。


 約束の時間までまだ三十分ある。


 少し早く来すぎた。


 ジャドも付いてきていた。


 ケータイ端末で時間を潰している。


 僕はその間ベリーと会話していた。




 今日のダンジョン攻略メンバーは、僕、ベリー、フレイズ、ジャド、クイン、ロメイン、フェオ、だ。


 僕とベリー以外は全員『マギ』だ。


 マギは契約解除を目指している。


 が、魔道国家ネストロス関係者と親しかった。


 全員が、戦士長のシアから体術の手ほどきを受けているらしいし、魔道技師のサッサラには大分良くしてもらっていたらしい。


 打算で人間関係出来るなら、僕も親しくしておかないと。


 簡単にむこうに行ってしまいそうだ。



『マギ』は全員が魔法使いタイプ。


 フレイズはリーダー。


 火と理の魔法を使う。


 神獣は精霊のサラマンダー。



 サブリーダーのロミルカは今回不参加。



 ジャドは『マギ』の主要構成メンバー。


 使う魔法の属性は闇。


 神獣は精霊のジェイド。



 クインも『マギ』の主要構成メンバー。


 全メンバーが三十人いる中で、会議に呼ばれた八人の内の一人。


 女性。


 ジャドの思い人。


 ベリーに雰囲気が似ている。


 使う魔法は、理魔法。


 神獣は精霊のユニル。



 ロメインも主要メンバー。


 女性。


 使う魔法は、金属。


 金属にも精霊がいる。


 神獣は精霊のメタル、らしい。



 フェオも主要メンバーの一人。


 ジャドの双子の兄弟。


 両親が離婚し、別々に育ったらしい。


 二人特別仲が良い訳ではない。


 魔法は風。


 神獣はシルフ。



 ちなみに、ベリーにも神獣がいる。


 神獣は大鷲だ。


 サイズは十メートル。


 羽を広げるともっとだろう。


 大きくて再現するのが非常に疲れる。



 僕がフレイズから聞いた情報と、僕が感じた事を紹介した。


 でもジャドから多重契約についての情報が手に入った。


 今説明したメンバーの情報にはたぶん嘘がある。


 契約が二つなら、多重ではない。


 二重と言うだろ。


 切り札は隠すものだ。


 だが、身内には晒さないと。


 まだ信用されていない。


 当然か。


 その為に共同でダンジョン攻略するんだからな。


 僕にも話せていない事がある。


 お互い様だった。




 全員揃った。


 皆で頷き合って、ダンジョンの中へ。



 僕達は全員での連携の訓練をしていない。


 連携面はこの攻略の最終層で嫌と言う程やる。


 フレイズには、『マギ』五人で攻略するつもりで潜ってもらって、僕とベリーが手伝う感じで行きたいと提案した。


 最終層以外は流す感じで、ササっと終わらせる。


 僕はロベストロニアのダンジョンを何度も攻略している。


 罠の位置は把握していた。


 僕は先頭に立ち、罠を説明しながらどんどんと先に進む。



 低階層を走り抜け、五十階層。


 順調に進んでいた。


 波乱が起こりそうな気配も無い。


 ここまでで大体八時間くらいか。


 休憩と仮眠が必要だ。


 五十階層の扉を出た先の踊り場に、皆で腰を下ろした。


 会話は少ない。


 クインとロメインが会話する。


 自然と皆が注目する。


 ロメイン:「キシさんの指示は的確」

 ロメイン:「卒が無い」


 クイン:「確かに」


 ロメイン:「相談相手として、理想では?」


 クイン:「かも」

 クイン:「ジャドはどう思う?」


 ジャド:「僕に振らないでよ」

 ジャド:「でも、たぶん、相談するまでも無さそうだけど?」


 ロメイン:「フレイズさん?」


 フレイズ:「…………」


 ジャド:「リーダーは、まだ、だって」


 ロメイン:「そうみたいですね」


 フェオ:「ジャド、相談の必要が無い、とは?」


 ジャド:「たぶん、切り札がバレている、って話」


 ベリー:「当ててあげよっか?」


 キシ:「おー」

 キシ:「僕も聞きたい」


 ジャド:「キシさん」

 ジャド:「自信あるの?」


 キシ:「まーね」

 キシ:「僕とベリーは同じ意見みたいだ」


 フレイズ:「…………」


 キシ:「リーダーは無言、か」


 ベリー:「当てるね」

 ベリー:「八人全員が全属性分の多重契約者でしょ?」


 フェオが指笛を鳴らした。


 正解らしい。


 フレイズ:「こんなに早くわかってしまうとは……」


 ロメイン:「得意な属性が有るのはホント」


 クイン:「そうなんです」


 キシ:「気にしないで」


 ベリー:「私達にも隠し事はあるのよ?」


 キシ:「ジャド」

 キシ:「話してないんだな?」


 ジャド:「ええ」

 ジャド:「まだです」

 ジャド:「昨日はそんな時間無かった」


 フレイズ:「聞かせてくれ」



 ジャドは説明した。


 大袈裟な説明だった。


 笑ってしまいそうになる。


 皆は絶句している。



 フェオ:「ベリーさんが、具現化された像に過ぎない?」

 フェオ:「え?」


 キシ:「ジュリットとアイアリを出そうか?」

 キシ:「ダンジョン攻略で出すのなら問題ないよ?」


 ジャド:「そういう問題じゃないです」


 フレイズ:「『トパーズ』以外は死兵か」


 キシ:「そうなるね」


 クイン:「ちょっと面白い」


 キシ:「だろ?」


 ベリーが僕の頬を思いっきりひっぱたいた。


 クインは爆笑している。


 ロメインはドン引きだ。




 暴露大会は終わった。


 親睦が深まったと信じたい。


 皆は携帯食を食べて睡眠を取る。


 明日は九十九階層まで。


 明後日が百階層。


 そうなる。


 五十階層から九十九階層は他と同じ。


 百階層だけは特別だ。


 百階層は挑んだメンバーの中で一番強いメンバーの想像する最強の神獣が出て来る。


 つまり、僕が最強と思っている神獣という事だ。


 そうなる。


 レイセの神獣、黒竜が相手だ。


 ま、本気出せば僕達四人だけでも勝てる。


 行けるだろ。





 五十階層から九十九階層は難なく行けた。


 百階層の扉を皆で通る。


 だだっ広い草原に出た。


 遮るものが何もない。


 皆に説明は済んでいる。


 直に出て来る。


 相手は黒竜。


 レイセの神獣。


 これに勝てなきゃ、レイセには勝てない。


 空から黒い塊が飛んでくる。


 大きな塊は、音もなく着地した。


 猫のように音が無い。



『マギ』全員が僕を見る。


 僕は頷いた。


 全員が魔法を放とうと構えた瞬間、殺気に反応して、黒竜が吠えた。




 このパーティーは魔法タイプばかりだ。


 タンクは僕の役目だろう。


 僕は瞬間移動で黒竜の前に移動し、顎をハンマーで打ち上げた。



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