30話 お風呂入りたい

 レイセ:主人公。

     黒戸零維世であり、クリア・ノキシュでもある。

     融合者。

     契約者。

     黒羽学園中等部生徒会長。

     美月は妹。

 黒崎鏡華:プロミネンスと名乗っている。

      ルビー・アグノス。

      融合者。

      契約者。

      月と太陽の国女王にして、現人神。

      小学六年生。

      美月と友達。

      レイセと婚約している。

 リビア:聖国クリアの元代表。

     レイセと婚約している。

 黒竜:真名、レムリアス。

    白竜と並ぶ最古の神獣。

    レイセと契約している。

 黄山十夜:春日高校一年生。

      融合者。

      契約者。

      ファガス。

 青井友介:七星学園高等部一年生。

      融合者。

      契約者。

      コナル。

 ボーデン・バレット:フレドの補佐。

           守護者。

           閑話に登場。

 フレドリック・ユルロア:連合国クロトの守護者長纏め役。

 リアンナ・ドバスカリ:海洋国家ドバスカリの女王。

            黒沢香織。

            大学生。

 エウェル:クリア・ノキシュの妻。

      故人。

 エーシャ:エウェルとクリアの娘。

      クリアとは血が繋がっていない。




 

 空間は青空だった。


「レイセ、今どうなった?」


「絶対死んだと思ったぞ」


「俺にはわかったぜ」

「攻撃を受け流すイメージが掴めたんだな?」


「フレド、ちょっと違う」

「俺のは受け流したんじゃない、受けたが切れなかったんだ」

「俺は自分を自然現象だと思い込んだ」

「奴らの攻撃には、存在感に負荷を与えるイメージが不足していたんだろう」


「心配させないでよね」


「胸がギュッと締め付けられるようでした」

「今まで生きてきて一番の恐怖です」


「悪い」


 俺は腕時計の魔道具で時間を確認した。


 百階層に入ってから、十四日目の昼だ。


 腕時計を見る暇が無くて良かった。


 十四日だぞ。


 信じられない。


 見ていたら途中で心が折れていた。




 景色が変わってきていた。


 空間の周りは、雲だ。


 空間の端まで移動する。


 雲の隙間から地上が見える。


 空間がゆっくり上昇しているのだ。




 空気は大丈夫か?


 呼吸できるのか?


 考えないといけない事は多くある。


 油断できない状況だ。


 まだ終わっていない可能性もある。


 でも、もう限界だ。


 十四日目という事実が俺の心を折った。


「悪い」

「俺、寝るわ」


「待てよレイセ」

「今の状況わかってるか?」


「そうです」

「上昇しています」


「お前ら、時間確認してみろ」


 みんなは魔道具で時間を確認した。


「昼頃ですね」


「違うわよリビア」

「日数を見て」

「十四日目よ」


「うわ、俺も寝よう」


「同じく」


「ボーデンがコナルのマネするとは」

「俺も寝る!」


「ちょっと、状況考えてよ!」

「寝ないで!」


「プロミ、きっと大丈夫です」

「私は寝ますよ」


「お、俺も寝るぜ」

「プロミが見張っててくれよ」


「頭来た!」

「もう知らないわ!」

「私だって寝たいのよ」


 みんなはマジックバックから寝袋を出して寝だしたみたいだ。


 俺か?


 俺は寝袋に入って、今、瞼を閉じている。


 やっと眠れる。



 もう、目覚めないでも良いかもな。



 どの位寝たのだろうか?


 ぐっすり眠れた。


 この状況でも、眠ければ寝られるらしい。


 良い笑い話になるだろう。


 頭がスッキリしていた。


 後は、風呂だな。


 長い事入っていない。


 濡れタオルで体を拭いているだけだからな。


 もうそろそろ限界だ。


 臭い筈だ。


 目を開ける。


 景色は宇宙に成っていた。


 星が綺麗だ。


 ぐう、と、お腹が鳴った。


 花より団子だ。


 俺は保存食を出して食べた。


 旨い。


 好物の順位が変わりそうだ。


 って、それはもう良いか。



 みんな寝ている。


 何時間経ったか解らないが、危険は無いみたいだ。



 ダンジョンは、ここが最終層で間違いないだろう。


 空間の端に、台座が出現している。


 九つ有る。


 みんなが起きたら確認しよう。


 まだ時間が有りそうだ。


 少し、考え事でもしようかな。



「みんな起きたようだな」


「寝不足で死ぬ所だったな」


「だな」

「ギリギリだった」


「肌が荒れそう」


「リビアは肌荒れ無いじゃない」


「プロミこそですよ」


「ピナンナ」


「エーディン」


「台座を確認するぞ」


 台座は九つ。


 一つは大きい。


 丸い台座の中央に、望遠鏡の様な筒が置かれている。



 一つは中くらいの大きさ。


 台座の大きさに反して、置かれているのは小さいペンダントの様な装飾品だ。


 三角形をしている。



 後の七つは同じ。


 細い台座の中央に、バスケットボール位の球体が置かれている。


 球体の色は虹の様に七色ある。



 コナルが望遠鏡の様な筒を手に取る。


「魔道具って事しか解らないな」


 コナルはプロミに手渡した。


 契約者は、神獣の知識を借り、触れた物の鑑定が出来る。


 コナルの神獣より、プロミの神獣の方が格上で、知識が深い。


「私にも魔道具って事しかわからないわ」


 プロミは俺に手渡した。


「…………」


「どうしたの?」


「ちょっと驚いただけだ」

「この魔道具は、精神体に成って過去の出来事を見る万華鏡だ」

「一回しか使えない、扱いの難しい物だ」

「俺が預かっていて良いか?」

「貴重なんだ」


「ん?」

「貴方しか扱い方が解らないし、良いんじゃない?」


「そうだな」


 俺は、自分の空間に魔道具を収納した。


 中くらいの台座を確認する。


「見た事ない金属ですね」

「触っても?」


 ボーデンがペンダントを確認する。


「魔道具ではないようですね」

「神獣はオリハルコンで出来ていると言っています」


「凄い単語が出てきたな」


「ゲームの世界だな」


「何です?」


「リビア、触ったら解るわ」


 リビアはペンダントに触った。


 神の金属。


 これを超える金属は無い。


 そんな情報を読み取っている筈だ。


「なるほど」


 リビアは俺に手渡した。


 解るのは材質だけだ。


 台座に乗っていたんだ、重要な筈だ。


 今は解らない。


 フレドに渡す。


 フレドは頷いている。




 他の七つは解っている。


 魔石だ。


 今まで見た中で一番大きい。


 それも七つ有る。


 もの凄い魔道具が作れるかもしれない。


「魔石も俺が空間に収納して良いか?」


「頼む」

「デカすぎて持ち運べない」


「まあ、そうだな」

「それしか無いわな」


 何時の間にか空間の中央に転送装置が出来ていた。


「帰るぞ」


「異存なし」


「同じく」


「お風呂入りたい」


「ホントそれね」


「全員そうだぜ」


「まったくです」


 俺達は順番に転送装置に入って行った。


 喜んだりしないのかって?


 喜んでいるよ。


 みんな嬉しすぎてちょっと遠慮している。


 恥ずかしいんだ。


 そっとして置いてくれ。



 この星空をまた見に来るのも良いかもな。


 辛かったがそう思える景色だった。


 ダンジョンを作った奴は、この夜空を見させたかったんじゃ無いか?


 そんな気がしていた。


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