水色の蝶
みけねこ
第1章
第1話 始まり
最近、H市の小中学校では生徒の失踪事件が相次いでいる。2ヶ月前からの事だ。
どの学校でも最低3回は事件が起こっていて、今までで41人いなくなっている。
ただ、K中学校では1回も事件が起きていなかった。
新聞やマスコミはこの事件の事を奇跡だと言っているが、それには学校の生徒たちしか知らない理由があったのだ。
*
K中学校
1-2の教室で、勇人は弘史に声をかけようとして気づいた。今日は弘史は休んでいたのだ。最近、弘史は週に2回くらい学校を休む。一番仲がいいので、少し寂しい。しょうがないので一人で屋上に出ると、蝶が2匹飛んでいた。
ーアサギマダラっていうんだって。
虫好きの弘史がそう言っていたのを思い出す。しばらく見ていると、別の蝶が1匹
飛んできた。その蝶は、ほかの二匹とはちがって全身水色だった。しばらく見ていると、やがてアサギマダラはどこかへ飛んで行ってしまった。そして、あとから水色
の蝶もどこかへ行ってしまった。そういえば、あの水色の蝶がよく目撃されているっていう噂を最近女子がしていた気がする。ああいう蝶は珍しそうだからな...。そんなことを思いながら、勇人は階段を下りて行った。廊下に出ると、目の前を水色の何かが駆け抜けていった。それに続いて、黒いなにかが倍の速さで駆け抜けていった。驚いて、何かが駆け抜けていったほうの廊下をのぞき込むと、そこには、黒い穴があった。まるで中で何かが渦巻いているような、気持ちの悪い穴だった。勇人は目を見開いて、しばらくぼうぜんとその穴を見ていると、穴は徐々に渦巻く勢いが増し、さらに大きくなっていった。もう勇人の足元までとどくくらいに大きくなっている。思わず後ずさりしようとするが、体がこわばって動かない。やがて勇人はその穴に飲み込まれてしまった。穴の中はひんやりしていて、勇人はその中にぐんぐん吸い込まれていった。だんだん意識が遠のいていって………。
*
気がつくと、勇人は学校の屋上にいた。しばらくぼんやりとしていると、始業のチャイムが鳴り始めた。勇人はハッとして屋上から下の階に降りる階段のドアを開けようとしたが、
「え?う、うそだろ……」
いつもなら簡単に開くドアが、押しても引いてもスライドさせても開かない。あきらめて屋上からの景色を見ていると、向こう側に人影が見えた。
こんな時に何だろうと思って向こうに回ってみると、水色の忍者服を着た後ろ姿が見えた。ふと、その人影が振り向いて、その顔を見た瞬間に勇人は声を上げてしまった。よく知っている人にとてもよく似ている顔だったからだ。
「……凛音?」
それは、小学2年生の頃に行方不明になって、今も行方がわからなくなっている幼馴染の
「へ………」
その水色の忍者服を着た少女は、まばたきを繰り返して言った。
「…ゆ…
言い終わらないうちに、キィー――ンと耳鳴りのような音がした。
「危ないっ!!」
その時、その水色の忍者服を着た少女にぐいっと手を引っ張られた。さっきまで自分がいたところの壁を見てみると、黒っぽい触手のようなものがぐにぐにとうごめいていた。
「あ、あれは…………」
勇人は思わずつぶやいた。すると、その少女が言った。
「あれが、最近の失踪事件の
勇人は絶句した。なぜなら、今まで犯人が人間の誘拐犯だと思っていたからだ。その少女がさらに言葉をつづけた。
「て、言うかさ。なんで中学生がこんなところにいるの?今、もう授業時間でしょ?」
「そ、その、ちょっと事情があって……」
勇人は、屋上にいた理由を順を追って説明した。廊下で黒い穴を見つけたこと、黒い穴に吸い込まれたこと、気づいた時には屋上にいたこと、階段へ続くドアが開かなかったこと。その少女は、黙ってふんふんとうなずきながら聞いていた。
「へえ、さらわれなかったの。運がよかったね」
「へ?あ、あれも失踪事件の犯人なんだ……」
「そうだよ」
勇人はふと、床が濡れている気がして床を見た。すると、なんとあの黒っぽい穴にいつの間にかはまっていた。まだ穴は小さかったがその少女もそれに気づいたようで、
「えぇっちょっうそ!マジ!?いつの間に…」
と言った。黒っぽい穴はすぐに大きくなっていった。廊下で見た穴より大きくなるのがずっと早い。やがて勇人とその少女を吸い込めるくらいになると、勇人とその少女は吸い込まれていった。どこまで行っても終わらなそうなくらいに長かった。どんどん視界がもうろうとしてきて……
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