コイントス
クトキノ
プロローグ
辺りは独特の緊張感に包まれていた。
一つの机を挟んで対峙する二人。
その横に三人が並んでおり、私達の行動を見張っている。
ここにいる者、一人一人が様々な感情に満たされていることだろう。
私もその一人だ。
不安と期待。一歩間違えば絶望、一歩踏み出せれば希望。
手のひらに伝う汗をスカートで拭い、目を瞑り、精神を落ち着かせる。
大丈夫だ。私ならきっと大丈夫。
自分にそう言い聞かせ、ゆっくりと目を開けると、対峙している相手も私と同じように目を開いた。
目線が交錯する。大きく開かれた黒い目が私を捉えている。
「じゃあ、始めるよ」
三人いるゲームマスターの中の一人の女性がそう呟いて、一枚のコインを取り出した。
アメリカ合衆国で流通している一セントコイン。
それを親指の爪の上へ置くと、手慣れた様子で上空へ弾き、手の甲を台にして受け取り、その上に手の平を被せてキャッチした。
俗に言うコイントスというやつだ。
コインを手の甲に収めたのを確認すると、アイマスクをされ視界を奪われた。
何も見えない暗闇。一筋の光すら視界には映らない。
「今から置くね」
声と共にカチッという音が聞こえると、それがコインを置いた音だと分かる。
事前に聞いたルール通りの段取りだ。
「さぁ、ゲーム開始だよ」
ゲームマスターの声を合図にゲームの火蓋は切って落とされた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます