05

「ごちそうさまでした。おいしかったです」


「それはよかった」


 食べ終わって。

 ちょっと、どうすればいいか、分からなくなってしまった。


「あの。わたし」


「なんだ?」


「なんでもします。えっと。どんなことでも。えっちなことなら」


「ばかかおまえ」


「うっ」


「おまえ。そう言うの、なんて言うか分かるか?」


「え。え?」


「むっつりすけべ」


「なっ」


「自分の性欲と他人の性欲が同じだと思うなよ」


「えっ。でも。わたし。この前一緒に」


「それはまあ、弾みだよ、弾み」


「あの。ええと。失礼かとは思いますが、その、女性経験のほうは?」


「ないよ」


「なんでそんな堂々と」


「心の底から女性を愛したいと思っているから」


「へえ」


「なんだおまえ。おまえも処女だろうが」


「いや、わたしは」


「そうだな。酒の勢いで自分の膣に手をまるごとぶちこもうとするむっつりすけべだもんな」


「いや、その言い方はさすがにしんどい」


「まあいいや。性欲と食欲が満たされたんだから、残りは睡眠欲だろ。寝るぞ」


 泣いたせいで足許あしもとがおぼつかなくって、肩を貸してもらいながら寝室に向かった。


 大きめのベッド。


 潜り込む。


「はい。ゆっくりおやすみ」


 電気が消される。


「待って」


「あ?」


「性欲。まだ、満たされてない」


「じゃあ、またひとりで致せよ」


「さびしい」


「じゃ、そうだなあ、ここで見てやるから、ひとりで致せ」


「なにそれ。はずかしい」


「俺に抱かれるのは、はずかしくないのか?」


「よく考えたら、それもはずかしい」


「しかたないな」


 彼が、ベッドに潜り込んできて。

 隣に出てきた。


「ほれ」


 抱きしめられる。とてもやさしく、撫でるように。


「ひええ」


「どこから声出してんだ」


「あの。はずかしい」


「ひとりでしろよ。この状態なら、俺から膣は見えない」


「えええ」


「ほら。なんか湿っぽいぞ」


「ううう」

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