生きようとしない背中、死ぬための仕事(※えっち注意)

春嵐

01

 ドナーがいなければ、数日の命。そう言われた。


 難病にすら認定できない代物で、とにかく、特殊の上に特殊を塗り重ねた症例。言われても、実感はなかった。現に、元気なままで、ここにいる。


 わたしの心が壊れるらしい。


 それをなんとかするために、ドナーが必要で。

 治す方法は、ドナーと夜を過ごすこと。いかがわしい意味ではなく、精神構造が異なり、その上で自分の存在を肯定的に認めてくれる相手と一晩を一緒に過ごせばいいらしい。


 要するに、恋人を作って、恋人と同じベッドで寝る。近くにいれば別にベッドじゃなくてもいいとは言われたけど。どうでもよかった。


 恋愛なんて、したことはない。するつもりもない。


 処女のまま死ぬんだなと、思った。あと数日で。命が尽きる。心が壊れるということは、自分が自分ではなくなるということだから、死ぬのと変わらないと思う。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る