夢のような告白

ポン酢

第1話

ドクンッ、ドクンッ

俺の胸は高鳴っている、自分でも分かるくらいに。なぜかと言うとこれから人生初の告白をするからだ。放課後の静まり返った教室で待っている俺は今にも逃げ出したい気持ちをぐっと堪えてその時をじっと待つ。

ガラガラガラ

きたっ!

「あの、鈴木くんであってる?」

教室の扉を開けて入って来たのは俺が学校ですれ違った時に一目惚れをし、それからずっと目で追ってきた憧れの人物、隣のクラスの1年2組佐藤舞さんだった。

「う、うん、俺が手紙で呼び出した鈴木洋介だよ。」

ふぅ、とりあえず自己紹介はできたぞ!

「よかった、それで私に何か用なの?」

「えっと、その、用って言うほどの事じゃないんだけど、実は...」

あぁ、言えない!恥ずかしい!

「えっと、何かな?」

ほら、佐藤さんが可愛く首を傾げてる、はっきりと気持ちを伝えるんだ、俺!!

「すーはー、ふぅ...、前からずっと君の事が好きでした、付き合ってください!!!」

ガバッ

俺は思いっきり腰をおり顔を下げ、腕を前に突き出した。

「え、えっと、あ、ご、ごめんなさい!!」

タッタッタッ

俺は頭が真っ白になり身体が崩れ落ちそうになりながら、自分が振られたことをしっかりと理解するのに数分時間を費やし、顔を上げると彼女がこの場を去っていたことに気づいた。


「おい、起きろって、先生に呼ばれてるぞ。」

ガバッ

「夢、か。」

俺はどうやら夢の中で告白していたらしい。

夢告白シュミレーション1回目、失敗



すぅ、はぁ、落ち着け、俺ならできる、初めての告白だが必ず成功させるんだ!

さーさー

と、穏やかな風が学校の屋上でこれからすることにとても緊張している俺の頬を大丈夫だよと言っているかのように優しく撫でる。

ガチャ

「えっと、鈴木くんであってる?」

屋上の扉から俺が待っていた人物が現れた。

「う、うん、あってる!俺が鈴木洋介です。」

よしっ、とりあえず受け答えは出来てる。

「そっか、それで私に話があるんだよね?」

「そう、そうなんだ、話っていうのは、その...」

大丈夫、俺なら行ける!勇気を出すんだ!

「その、実は俺、君の事が好きなんだ、だから、付き合って欲しい」

よしっ、前に夢で見た時はがっと行き良いよく告白してそれで佐藤さんもびっくりして断ったんだと思う。だから今回はゆっくりと慎重に言おうと思った、うん、成功だ!

「えっと、その、気持ちは嬉しいんだけど、でも、鈴木くんのこと何も知らないし、だから、その、ごめんなさい!!」

タッタッタッ、バタンッ

俺は今度こそ振られてしまった、そう思うと今にも泣きそうだ。


「おい、起きろって、チャイムなってるぞ」

ガバッ

「え、また夢?」

夢告白シュミレーション2回目、失敗


俺はそれから夢で言われたことを思い出し、まずは知ってもらおうと挨拶から初めっていた。そして、夢の中で自分が告白する事を繰り返す内に夢だと分かっていき、どうすれば成功するのか試行錯誤をする事にした。


時にはプールの授業で...

よしっ、25メートル先に彼女が座って友達と話してる。ここでカッコよくあそこまで泳いで行き、そして告白するだ!

バシャバシャ、バサッ

俺はクロールで彼女のいる25メートルを泳ぎ行き良いよく身体をあげる、すると彼女はこちらを見ていた。

「佐藤さん!」

俺が彼女の名前を呼ぶと目が合う。

「は、はい!」

「俺は君の事が好きです、付き合ってください!!」

「ふぇっ、えっーと、ご、ごめんなさい!!」

夢告白シュミレーション13回目、失敗



時には音楽の授業で...

「俺は〜♪君の事が〜♪好きで、好きで〜、仕方ないんだ〜♪♪」

彼女の前で愛の歌をうたってみた

「えっと、その、ごめんなさい、よく分かんない。」

夢告白シュミレーション34回目、失敗


時には昼休み...

ガラガラガラ

俺はグラウンドにライン引きで大きく『好きです』と書いた。

「佐藤さん!!!」

1年2組の教室のある窓に向かって精一杯の声を出す。すると、

「え、鈴木くん?!」

彼女は外から呼ばれたことに気づき、窓から顔を覗かせた。

「君のことが好きです、付き合ってください!!!」

俺が学校中の生徒が見てる中、気にせずに告白すると、

バサッ

彼女は窓から『ごめんなさい』という字の書かれた横断幕を垂らした。

夢告白シュミレーション65回目、失敗


時には登校時間...

俺は彼女がクラスに来るよりも早くに行き、黒板に『好きです、付き合ってください、返事待ってます、1年1組鈴木洋介』とでかでかと書き、俺は自分の教室へ行く。

教室のドアを開け、自分の席へ向かう途中、ぱっと黒板を見ると『ごめんなさい、そんな風に鈴木くんを見てなかったです、1年2組佐藤舞』と何故か既に書いてあった。

夢告白シュミレーション81回目、失敗


なかなか上手くいかず、けど彼女の仲は少しずつだが深まってはきていた。

そして俺はまた昼休みに放送室に行き、

ピンポンパンポン♪

「えー、1年2組佐藤舞さん、1年2組佐藤舞さん、1年1組鈴木洋介から至急連絡です、では伝えます、えー、実は前から君の事が好きでした、付き合ってください!以上です、ご返事待ってまっす。」

校内放送されていることなんか気にせずに俺は大々的に告白する。

ガチャ

「ねぇ、鈴木くんさっきのどういうこと?!」

数分後、彼女が血相を変えて放送室にやって来た。

「どうもこうも告白だよ?」

「冗談はやめてよ!こっちも恥ずかしかったんだからね?!」

「いやいや、本気だよ?まじで好きだから告白したんだよ?」

「え?!うそ...、え、ほんとに?」

「うんうん」

「それは...嬉しい。」

お、これはまさか!ついに成功か!?

「けど、やっぱりごめん!!!」

そ、そんなぁ、今の行けた感じじゃん。

夢告白シュミレーション99回目、失敗


「はぁ、どうすれば成功するんだよぉ」

「おい、どうしたよ?そんなに落ち込んでよ。」

昼休み、俺は親友と一緒にご飯を食べている際に落ち込んでいるのを心配してくれている。

「お前だったら告白ってどんな感じにする?」

「お?なんだよ、急によ。」

「んー、なんか上手くいく方法ってないのかなって思ってさ。」

「あー、佐藤さんに告白でもする気か?そうだなぁ、俺だったら行き良いかなぁ、やっぱりこう、がって行きたいじゃん」

「がっとねぇ...。」


すぴー、すぴー......ガバッ

ん?また夢の中か。黒板には英語が書かれており、今は英語の授業をしている最中だとわかる。つまり今はどこのクラスも授業中だということだ。よしっ、がっと行ってみるか。

ガタンッ

「うぉ、鈴木どうした?」

俺は授業中だということも気にせず突然立ち上る。

「先生、ちょっとトイレに行ってきます!」

「お、おう、分かった。」

俺は素早く教室を出て、隣の教室の扉を開ける。

ガラガラガラ

ざわざわと急に開いた扉から俺が現れたことにより教室にいた人達みんなが困惑しているのが伺える。

「佐藤舞さん!」

俺は彼女の名前を呼び、顔を向ける。ふぅ、と一呼吸置きそして...

「好きだ、付き合ってくれ!!!」

ガタッ

彼女はびっくりしたのか椅子から飛び上がる。

「は、はい!」

え、今なんて?はいって言ったの?つまり、付き合えるってこと?俺は嬉しさのあまりか、混乱しているのか呼吸が荒くなりだんだん意識が遠のいて行く。

夢告白シュミレーション100回目、成功


ガバッ

「はぁはぁ」

顔をあげ辺りを見渡すと今が授業中であることが分かる。そして先程の夢でのことを思い出し、自分が成功したのだと改めて理解する。


ガタッ

「先生!」

俺は椅子から立ち上がる。

「お、鈴木どうした?」

「トイレに行ってきます!」

「そ、そうか、わかった。」

教室を飛び出て、俺は隣の教室に向かう。

ガラガラガラ

「ん?君どうした?」

隣のクラスでも当然のように授業が行われているため、先生は疑問に思う。だが、今の俺には周りは見えていない。唯一視界に入っているのは佐藤さんだけだ。

「佐藤舞さん!」

ふぅ、俺は一呼吸置き夢の中で行ったことを実行する。そう、俺はこれから人生初の告白を公衆の面前で行うのだ。

「好きだ、付き合ってくれ!!!」

そして......


私は初めてラブレターというの貰った。いや、正確にいうと下駄箱の中に手紙が入っておりそこには放課後に教室に来て欲しいという内容だった。そうして私は放課後に隣の1年1組の教室に赴くと、1人の男子生徒が居た。私は彼がこの手紙の人だと思い、

「あの、鈴木くんであってる?」

と、確認をとってみる。

「う、うん、俺が手紙で呼び出した鈴木洋介だよ。」

どうやら合っていたらしい。

「よかった、それで私に何か用なの?」

何となくは分かっているがそれでも聞く。

「えっと、その、用って言うほどの事じゃないんだけど、実は...」

「えっと、何かな?」

彼は私から見ても緊張しているのが分かる。

「すーはー、ふぅ...、前からずっと君の事が好きでした、付き合ってください!!!」

ガバッ

彼は腰をおり頭を下げ、手を前に突き出してくる。

「え、えっと、あ、ご、ごめんなさい!!」

私はいきなり来たことにびっくりし、ただ謝って教室を飛び出てしまった。


「佐藤さん、起きてください。」

ガバッ

ゆさゆさと揺さぶられ顔をあげると先生が覗き込んでいた。

「佐藤さんが居眠りなんて珍しいですね、もう少しなので頑張ってくださいね。」

そういい教室の前へと戻っていく。

どうやら、私は授業中に夢を見ていたようだ。


今、私は屋上に向かっている。何故かと言うと鈴木洋介という人から手紙を貰った。内容は放課後に屋上に来て欲しいとの事だが、私はこの人物を知っている。まぁ、夢の中での話なのだが、もしかしたら前のあれは正夢だったのかもしれない。と、そんなことを考えながら私は屋上のドアを開ける。

ガチャ

屋上にはやっぱり夢で会った彼が居た。

「えっと、鈴木くんであってる?」

確信はあったがとりあえず確認してみる。

「う、うん、あってる!俺が鈴木洋介です。」

やっぱりそうだ!

「そっか、それで私に話があるんだよね?」

なぜ呼ばれたのか分からないふりをする。

「そう、そうなんだ、話っていうのは、その...」

彼はやっぱり緊張しているように思える。

「その、実は俺、君の事が好きなんだ、だから、付き合って欲しい」

夢とは違って随分とゆったりと私の目を見て告白してきた。

「えっと、その、気持ちは嬉しいんだけど、でも、鈴木くんのこと何も知らないし、だから、その、ごめんなさい!!」

私も今回はしっかりと丁重に断ることが出来た。


「おーい、舞〜、早く起きないと先生に怒られちゃうよ〜」

いつの間にか隣から声をかけられていた。顔をあげてみると屋上に居たはずなのに教室で座っていた。

「あれ、教室?」

「もう、寝ぼけてるの?急に舞が寝ちゃってびっくりしたよ。」

と、隣から親友が話してくれる。どうやら私はまた夢を見ていたらしい。だが、2回も夢で同じことがあるとさすがに気になったので私は鈴木洋介という人がこの学校に居るのか隣のクラスを見ると本当に居た。それから急に彼が私に挨拶してくるようになった。何も接点もなく話したこともなかったのにだ。私は鈴木くんと挨拶を交わしていくうちに友達となりよく話したり遊んだりするようになっていった。ただ、そうしてる間も私は授業中に眠り夢の中で告白されることが続いた。いつも違ったシチュエーションで告白される。例えば、プールの授業で彼はクロールで私の所まで来て急に告白してきたり、音楽の授業で歌いながら告白してきた。さらには公衆の面前で公開告白してくるなど私の方が恥ずかしくなってしまう場面は多々あった。たくさん繰り返していくうちに私はどこかで今回はどう来るのだろうとハラハラしていたりした。数多くの告白をされてきたが私はまだ1度もOKしていなかった。理由は自分でも分からないが、最近は夢のせいもあって彼のことを無性に意識してしまう時があるのにだ。


今、私は授業を受けている最中だ。しかし繰り返す内にここが夢の中だということに気づく。きっとこれで100回目となるのであろう。

今回、彼はどうやって告白してくるのだろう、私がどう対処するかを考えていると

ガラガラガラ

「佐藤舞さん!」

いきなり彼が現れた、私はまだ自体の収集に追いついてない。

「好きだ、付き合ってくれ!!!」

真剣な目し、完結でいてストレートな告白をされてしまったためか椅子から立ち上がった私は頭が真っ白になり

「は、はい!」

と、答えてしまっていた。


ガバッ

誰に起こされるでもなく起きた私は今自分が見た夢について考えることにした。初めて私は夢の中でOKしてしまった。だが、所詮は夢は夢なのだ。どうこうなることはない、筈なのだ。もし本当に起こることなのだとしたら私はどうすればいいのだろうか。頭をぐるぐるさせながら授業中だというのにそんなことを考えていると

ガラガラガラ

急に教室の扉が開きみんながそこに注目する。

「ん?君どうした?」

先生はいたって平然としながら彼に尋ねる。

「佐藤舞さん!」

先生に話しかけられたことなんて気付いていないのか彼は私の方だけを真っ直ぐに見つめて名前を呼んできた。

「好きだ、付き合ってくれ!!!」

これが現実なのか夢なのか分からない。だが彼の真剣な表情と飾り気ない本心からの本気の告白を受けた私は先程まで考えていたことなどさっぱり忘れ、口から零れた言葉は「はい」だった。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夢のような告白 ポン酢 @0110R

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る