『楽しい時間はあっという間』




「ここが私の住んでる家よ...と言っても一人暮らしだから少し広いけどね」


 鈴原先輩がお詫びとして可憐と俺をお家にご招待してくれていた。


 思った通りの大きな屋敷で敷地も広かった。


 ここで一人暮らしというのは相当寂しいのかもしれない。


「まぁ週一で庭師や使用人が出入りをしているけどね」


 聞く話によると、使用人の出入りは良くするらしい。

 特に車を出し入れすることが多く休日でも平日でも送り迎えが当たり前らしい。


 それでも直接お屋敷に入るのはやはり週一と決められているらしい。

 話に聞くと理事長は鈴原先輩のことが可愛らしく調子に乗って屋敷を一つプレゼント!とあげてしまったことがこうなったらしい。


 行動力の凄さを見せつけられる理事長だな...と思いながら話を聞くことにした。


「お爺様は私のためを思ってしてくれているのはわかりますが、その...一人の時間が多いと流石に寂しいです」


 その目は本当に寂しそうにしていたがどこまでが本心なのかは分からない、どの笑みも悲しみ方も誰かから教えられたようにしか見えなかった。


「そうなんですか?さっきの執事さんとか結構来てそうなイメージですけど」


「高尾(たかお)の事ですか?」


 高尾さんって言うんだ...案外普通な名前だ...セバスチャンって思ってた。


「そうです、さっきの運転手さん」


「あの人は小さい頃から執事をしているのである程度の信頼をお爺様から得られてますので...」


 聞く話によると理事長は孫である鈴原先輩を溺愛しすぎていて親もドン引きらしい。


 変な男を近づけないようにと思い色々なパーティーに参加させ社会を見させていったらしい。


 鈴原先輩の容姿を見てか結局言いよる男は増え続けその行動は失敗...いやある意味成功になったのだろうか、鈴原先輩に婚約の話は全て断るようにしているらしい。


 鈴原先輩自身知らない男と婚約は無理だと言い、理事長は断固拒否状態らしい。


 それからも色々話してもらった、理事長の溺愛が日に日に増し嫌気がさした結果、悪いことをしようと考えたらしい。


 安直な考えだろう。


 そこで巻き込んでしまったのが可憐らしい。

 本当は巻き込むつもりはなかったらしい。


 あとから理事長に結局バレてしまい謝罪だけでも...と思い呼び出したがダメだったので俺を使い直接謝ることにしたらしい。


 最初から自分で行けばいいのでは?と思ったが鈴原先輩は結局人との関わり方が間違っていたという欠点があっただけだった。


 完璧な人はいない、それがわかった日だった。





 ◇





 可憐の反応は薄かった、本人曰く今更言われても...って感じらしい。


 部活に戻る気もないし、過ぎた事を気にしても意味が無いと言っていた。


 怒っても良いと思ったがそれを口にすることはやめておいた。

 結局俺は部外者にすぎないので口を出す必要は無い。


 可憐が決めたことに文句を言う必要は無いのだ。



 その後可憐と鈴原先輩が手料理をしていた。


 オシャレなオムライスを作っていてとても美味しかったのでまた食べたい...そんなことを思っていたら家に着いていた。


 時間が過ぎるのはあっという間だと思ってしまった。





(あとがき)


鈴原理事長「(`Д´)´,·.·`ハックション!!!誰か儂の噂でも!?奏がしてくれてるのかのぉ〜」


高尾「鈴原理事長、奏お嬢様に婚約を申し立てる人が...」


鈴原理事長「ん?そんなのお引き取り願っとけ!くだらん男に奏をやる気はない!」


高尾「そろそろその意地も辞めておいた方が良いのでは?お嬢様にも呆れられておりますよ」


鈴原理事長「そ、そんなの分かっておるわい!いい男がいないだけじゃ!」


高尾「鈴原理事長は高望みし過ぎです。お嬢様が選んだ相手が一番幸せだと思いますよ...って話は聞いてませんか....」


高尾さん(執事)は苦労人…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る