第13話 召喚獣たち
神級の前例は全くない。だから何もかもが未知数だ。だが、たった一つ方法があるとすればこれしかないだろう。
「だが、通常の獣が戻る方法なら知っている」
「「!?」」
二人は驚いた顔をしたように俺を見て、そして嬉しそうに、近づいてきた。
「お前たちも獣と同じように召喚されたからもしかしたらの話しだが」
「……して、その方法とは?」
二人には希望が見えているらしい。本当にうれしそうだ。出会って間もないが、こんな表情もこいつらはできるのかと俺は思った。けれど、こいつらにその方法を言ったらこの表情は壊れるだろう。
言う覚悟を決めて、息を大きく吸い、そしてゆっくりと吐いてから声を出した。
「召喚獣が戻る方法は、召喚した者が死ぬことだ」
その瞬間、空気が重たくなるのを感じた。同じ立場の野獣なら、その言葉を理解した瞬間に、俺の喉元に噛みついて殺すだろう。だが、こいつらは召喚させられた者だとしても人間だ。獣と違って、殺すのに躊躇いはあるに決まっている。けれどこいつらが本当に戻りたいと思うのなら。
「帰りたいと思うのなら、殺せ」
俺の言葉に二人は目を見開き、俺をじっと見つめた。
「それしか、今考えられる方法はない。今すぐに帰りたいならな」
椅子に深く腰をかけた。
今さら生きていたい、という気持ちはない。自由を失って、親父に兄貴の代りをさせられ、一体何の為に生きていけばいいというのだろうか。
「おい、都獅」
俺が都獅を呼ぶと都獅は下を俯き、まるで何かを考えているようだ。俺はそんなことを気にせず、話を進める。
「お前の腰には刀があるだろう。それで心臓を突刺せば、すぐに元の所に戻れる可能性があるぞ?」
そう言うと都獅の姿が一瞬にして見えなくなった。どこに行ったのか、周囲を見渡そうとした時、ヒンヤリと首に冷たいものが当たった。
それはいつの間にか俺の後ろにいる都獅が添えている、刀の冷たさだった。
自分の汗がゆっくりと流れていった。
「拙者の刀は、軽々と人を斬るような刀ではない」
都獅の声は、怒りに満ち溢れていた。だが、その目にはなにか悲しそうな色が宿っている。
都獅はゆっくりと俺の首から刀を離し、鞘に収めた。
「もう二度と言うでない」
「おい、ガキ。ほかに帰れる方法は本当にないのか?」
「今考えられる方法はないと言っただろう?」
俺はふうと息を吐きながらユウ斗に言った。
なぜだろう、何か変な感じがする。
この気持ちは、安心感に似ている。俺は都獅が刀を収めたことに、安心をしているのか?
生きる意味もないと思った俺が?
「弱くなったものだ」
「あ? なんだよ」
「いや」
ここまで殺すことに抵抗するなら、方法があるか調べておいてやるか。
俺は椅子から立ち上がり
「まず飯を食おう、話はそれからでもいいだろう?」
と言った。二人は何を突然、といった顔をしていた。さっきまで「殺す」話しをしていたのだから当たり前だろう。
「……ほかの方法があるか調べてやる。今は飯を食べよう。お前たちも腹が減っているはずだろう、と言っているんだ」
と足りなかった言葉をつけたし、説明をしてやると顔を見合わせて、ユウ斗は複雑そうに、都獅は苦笑いをして見せた。
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