下駄箱を開けたらラブレターが二十一枚入ってたのでめっちゃうれしいと思ったら単に一つ上のイケメンの下駄箱の板が抜けただけだった

つちのこうや

沢山ラブレターが入ってた


 僕は朝登校した。


 当然。


 登校したらまずは靴から上履きに履き替える。


 これも当然。


 そのためには下駄箱の扉を開ける。


 これもかなり当然……って、うおおおおおお?


 なんかどっさどっさ落ちてきた。


 大量の……これは、ラブレターだ!


 だって封筒だもん。可愛い女子が使いそうな封筒。


 ていうか今日は何の日?


 よくわかんないけど、なんか告白する日なの?


 わからないけど……これはいたずらかな? それとも喜んでもいいのかな?


 そう考えながらラブレターらしきものを集めていると、


「よお隆太! 今日は楽しみだな!」


 声がしたので、僕は慌ててラブレターらしきものの束を身体で隠しながら振り向いた。


 親友の正也だった。


「何が楽しみなんだ?」


「え、あのな。俺ら文化祭がコロナで中止になっただろ、その代わりに、あるイベントが発生してるってわけだ」


「イベントがある? なんの? オンライン?」


「そういうイベントじゃないんだよなあ。あのな、文化祭が終わったらな、打ち上げの時に告白しまくるんだよ例年」


「ああ、そういう流れあるな」

 

 僕には縁がなさすぎて本当にそうなのか知らんけど。


「今年は、それがない。で、何が起こってるかといえば、唐突な告白ラッシュ!」


「そうなのか……」


 僕は後ろでラブレター(確信)の束を持ちながらつぶやいた。


「ま、俺らには関係ねーな。な、隆太」


「そーだな、うんうん」


「さてと、下駄箱にラブレター入ってたりしねえかなあ? あ、入ってなかったわ」


 正也は、上履きを雑に床に置いて履いて、また言った。


「あ、もしかしてお前なんか入ってた?」


「いや……」


「だよなあ、凛生なんて二十枚くらいもらってそうだけどな。まあ俺らはそんなもんだよな」


 正也は廊下を先に行った。


 僕はそろそろと、ラブレターを身体の前に持ってきて眺める。


 どういうことだろう?


 とにかく、僕はたくさんのラブレターをもらってしまった。


 数えてみたら二十一枚。


 あまりに意外な出来事すぎて、上履きにかえるのも忘れてた。


 僕はたくさんのラブレターが入っていた下駄箱から上履きを取りだそうとした。


 そしたら……え?


 上履きが二足ある。


 上に乗ってる自分のではない上履きを見ると、凛生の名前が……。


 あ……そういうことですか。


 僕は下駄箱に手を突っ込んで中を探る。


 割れた木の板の破片がたくさんある。


 そして……手を上にやると、手に当たるものがない。


 そう。そういうこと。


 僕の下駄箱の上は凛生の下駄箱。


 つまり、ただ、凛生の下駄箱の板が抜けて、全部僕のところに落ちてきただけだったのだ。


 はあ……はいはい。正也大当たり。


 本当に二十枚くらいもらってますよこいつ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る