なぐさめられたい件について

 なぐさめたいと言ってくれた小学生の女の子に、勉強を頑張って認めてもらおうとしたけど振られたことを話した。そして、その振った女の子は、学年一位の人と付き合っていることもつけ加えた。


 どうしてそんなに話したのか。


 それは小学生の女の子が、しょんぼりな理由を詳しく話してと言ってきたからだ。


「私……褒めたいです。あなたを」


「ありがとう……」


 小学生なのに気遣いが本当に児童館の先生かと思うくらいだ。


 でも、僕を見つめてくる瞳は幼くて、いや、まっすぐに純粋で、だからまだ小学生の女の子は続けた。


「私、絶対そのがんばりって、誰かの心を動かしていると思います。誰かがあなたの努力を見てるんです」


「そうかな……そんな気は……」


 しない、とは言わない。だってこんなに励まそうとしてくれている僕よりずっと年下の小学生がいる。


 僕は図書館に来て本当に良かったと思うくらいには嬉しかった。


「あの、少しは嬉しい気持ちになりましたか?」


「なったよ。本当にありがとう。君のおかげでいろいろとすっきり考えられた」


 僕が正直に感じたこととお礼を伝えた瞬間、小学生の女の子は笑った。


 だけど笑いながら涙を流して、そして言った。


「よかったです。私、誰かの役にたてました。うれしいです。私、いる意味ありました」


 僕は勉強はまあまあ身についたけど、やっぱりもとは馬鹿なんだとこの時わかった。


 だって、なぐさめたいと言ってくれた小学生の女の子になぐさめられておしまいだと思っていた。


 だけど、本当は違って。


 なぐさめられたい人となぐさめたい人が出会ったのではなくて。


 なぐさめられたい人同士が出会ったんだ。


「次は僕の番だ」


 きっとまだ遅くない、だから僕は言った。


「え? つぎ……?」


「そう、次は僕が君をなぐさめるから」


 ずっとランドセル背負ったまま座っていた小学生の女の子は、ランドセルを抱えて座り直した。


 そして、小学生の女の子は話し始めた。


 どうして、なぐさめられたいのかについて。

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