僕をなぐさめてくれるJSが現れた件について


 僕は珠坂さんに優しく振られた。


 まじで優しくて、僕のことを心配そうに見ていたし、申し訳なさそうな顔もしていた。


 だけど僕に残ったものはいい成績だけだ。


 家に向かいながら、僕はどうしようかと考えた。


 僕が勉強を頑張る目的はなくなった。


 だから勉強はもうやめて、昔のように成績最下位になるか。


 そうすると、きっと今よりずっと楽だ。


 だけど、僕はそうはしたくなかった。


 それは、友晴に勝って学年一位を奪い取りたいからではない。


 単純に、自分にもまあまあ得意なことができて、嬉しかった。


 まあ学年1位で珠坂さんと付き合っている友晴は忘れよう。


 そうして、努力して学年2位まで上がった自分を褒めよう。すげえな努力家の僕。


 ……なんてことができたらいいなと思う。そんなポジティブな人になりたかった。


 褒められるわけなかった。泣きそうだ。家に着いてしまったら僕は泣き止めなくなっちゃう。


 努力した上で、自分が友晴の劣化版状態になってるのは最悪な心地だった。




 僕は図書館に行くことにした。


 図書館で勉強しようと思った。正直進まないだろうとは思うけど、みんなが本を読んだり勉強をしたりしている前では僕は泣かない。


 泣かないでいたかった。


 いらいらしてつらい自分がしょぼすぎて泣くのは嫌すぎた。


 だから僕は図書館の自習スペースの一角に座り、一人でスマホのホーム画面を見つめていた。


 隣に人が座ってきた。


 勉強道具が置かれた。


 そうだよな。ここは本来勉強熱心な人が使うところだ。今の僕がここにいるのはおかしい。


「あの、大丈夫ですか?」


 だから隣の人が僕を気遣ってくれたとき、僕は驚いた。そしてなぜか驚くと同時に、気持ちがゆっくりとしたテンポでゆるむ気がした。


 隣を見ると、水色のランドセルを背負った二つ結びの小学生の女の子がいた。少し大人びていて冷静さが出ているのに、やっぱり幼かった。


「ごめん。今どきます……」


 僕がスマホをポケットにしまおうとすると、小学生の女の子が言った。


「あの、どかなくてそこにいてください。あの、私、しょんぼりなあなたをなぐさめたいです」

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