第3話 男子大嫌いの橘穂乃花さんに伝えたい事
『ホノハナさんって、ホラーゲームが好きなんですか』
『ベルさん、私、ホラー系苦手なんです。でも誰かが遊んでいるのを見るのがすごく好きで』
初日のコメントで、校内一の美人と言われる橘穂乃花さんに、苦手なものがある事を知った。好きなものが何かも知って。そんな彼女にすごく親しみが湧いた。
『ホノハナさん、僕全然ゲームが上手くないし、進むのも遅くてすみません。いつも大げさに怖がるばかりで』
『ベルさん、私も一緒になって怖がっていますよ。一緒に遊んでるみたいで楽しいです(笑)』
2日目のコメントで、男子嫌いの橘穂乃花さんが、実は男子にも優しいことを知った。そんな彼女と、もっと親しくなりたいと思った。
『ホノハナさんは、ホラーゲーム実況っていつから見だしたんですか?』
『ベルさん、えっと中学生の頃です。小学生のときは、ゲーム好きの男子の隣で見てたり。あの頃がちょっと懐かしいです』
3日目のコメントで、橘穂乃花さんは小学生の頃、男子と仲良くゲームで遊んでいた事を知った。そして、中学生になってから男子と何か嫌な事があったのではないかと思った。
でもそういうのは、聞かない事にした。もっと楽しい話をしようと決めた。
『ホノハナさんって好きなゲーム実況者います?』
『ベルさん、特にこの人っていうのはなくて。その、一生懸命楽しくゲームしてる人が、気になっちゃいます』
『ホノハナさん、あの、僕大人になってもゲーム好きで、ホラー系とか色んなゲームの実況とかすると思うんです。それって、子ども過ぎますかね?』
『ベルさん、そうかもですね(笑)。でも私もホラーゲームの実況とか、いろんなゲームの実況動画を大人になっても見てると思います。似た者同士ですね(笑)』
気づけば、もうホノハナさんしか見ていない、僕のホラーゲーム実況動画。
相変わらずヘタクソで、相変わらず少しずつしか進まない、僕のダメダメな動画。
でも、ホノハナさんは、いつも楽しんでくれて。
『あともうすぐで最後の敵ですね。頑張ってください。(^^♪』
ホノハナさんが『♡ 良いね』をしました。
コメントでのやりとりも含めて、僕のホラーゲーム実況は3ヶ月を過ぎていた。もうすぐ終わりを迎える。それはホノハナさんとの別れを意味していて。橘穂乃花さんを、もう色々と知る事ができなくて。
「あぁ……、嫌だなあ~、それは」
自室で、柄にもなくそんなことを呟いていた。
「僕は……」
ホノハナさんに楽しんでもらえて、すごく嬉しくかった。橘穂乃花さんに楽しんでもらえて、すごく嬉しかった。
僕は……、ホノハナさんとこれからも一緒に、いや、橘穂乃花さんとこれからも一緒に――。
気づいたら僕はコメントを打ち込んでいた。
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