ホラーゲーム実況動画を始めたら、学校で一番の美少女と言われる橘さんが見に来ちゃいました。

@myosisann

第1話 ホラーゲーム実況動画を始めました

 高校2年生になったばかりの春。そしてゲーム実況者になって2年目を迎えた節目。

 まだ不慣れな新しい教室で、僕こと鈴木優太すずきゆうたは、授業の合間の休憩時間に、次はどんなジャンルのゲームをしようか悩んでいた。今までロールプレイングゲーム(RPG)の実況動画を作って、動画サイトに上げていたが、PV数が全然伸びない。すぐ夢中になって全然実況しない動画になってしまうからだ。次こそはちゃんと実況して、多くの人に楽しんでもらえる動画を作らないと……。


「あたしね、ホラーゲームの実況をよく見るの」


 ふと耳に入ってきた明るい女子の声。視線が前方へ吸い寄せられる。僕の席から机2つ分離れたところに、3人の女子が集まって雑談をしていた。そのうちの1人に、僕の目が止まる。

 橘穂乃花たちばなほのかさん。僕と同じ17歳。いや当たり前の事なんだけど、そう意識しないと同い年に思えないからだ。女優みたいに整った顔立ち。体型は漫画雑誌の表紙を飾るグラビアアイドルに引けを取らない。その美貌は校内一番との噂があるくらいだ。


「うん。『♡ いいね』したりもするよ。あっ! 大好きな動画にはコメントもしたりするする。『ホノハナ』ってあるでしょ? これ私」


 橘さんが友達にスマホを見せる。とても楽し気で、肩まで伸びたマロン色の艶やかな髪が愛らしく揺れる。

 ……、次のゲーム実況、ホラー系にしようかな。でも、苦手なんだよなぁ……。でも頑張ればどうにかなるだろ。てか橘さん、ユーザー名『ホノハナ』なんだ。穂乃花だからホノハナ。可愛い……。もし『♡ 良いね』なんかもらえたら……、って何を考えている!? 動機が不純すぎるだろッ!

 でも結局僕は、ホラーゲーム実況動画を作って、動画サイトに上げるのだった。その出来栄えはひどいに尽きる。不気味なゴーストなどが出るたびに、大声で悲鳴を上げるわ、慌てて武器の拳銃を撃ちまくるわ、弾が無くなってひたすら逃げるわ、最後はゲームオーバーになるという。物語が少しずつしか進まない。怖がりの性格が災いして少しずつしか上手くならない。そんな動画にPV数は伸びるわけがなく。はあ~……、絶対に橘さん見に来ないよな。どうしよう、まあせっかくだしクリアするまで頑張るか……。

 そしてホラーゲーム実況動画を投稿し続けて1ヶ月を過ぎた頃。大事件が起こってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る