口が裂けても言えないこと…

Protain公爵

秘密

――――――――4月上旬、丘の上高校、お昼休み―――――――————


「———だから言えないって、俺もう行くよ。」

「ケチーーー。」

「教えてくれてもいいじゃん!」

「なんで秘密なのよ~~。」


 斉藤洋介さいとうすけは騒いでいる女子たちを後に教室を立ち去る。「女子高生ってのは、どうしてこうも人の秘密を知りたがるのか、全くもって分からない。男子高校生の昼休みは貴重だというのに。」と心の中で愚痴る。


 洋介は教室を出たその足で、教室がある館とは別の館の屋上に向かう。途中、売店で無糖コーヒーとイチゴミルク、ハムとレタスのサンドイッチを購入してから、屋上に続く階段を急ぎ足で登ると、屋上入口扉の前の踊り場に見慣れた姿を発見した。


「お待たせ、ごめん少し待たせちゃったかな?」

「んっ?ああ、洋君!全然そんなことないよ。」


 佐世保真理させぼまりは頭を左右にフルフルと小刻みに振った。洋介はその姿を見て、自然と頬が緩んでしまう。見惚れてしまいそうになる前に、二人座るのが精いっぱいなくらいの広さの踊り場で、少し間を空けて彼女の隣に腰を下ろした。


「そっか、なら良かった。じゃ、お昼食べよっか。これ、待たせちゃったお詫びに!」

「キャッ!何?!。」


 彼女の頬に先ほど買ったイチゴミルクを少し不躾に、でも優しく当てる。


「冷たいよ、もう!」

「ご、ごめん!悪気は無かったんだ。」

「知ってる。ありがと、洋君<ようくん>。」


 先ほど教室で女子達に取り囲まれて、洋介が訊かれていたことはまさに真理のことであった。先ほどの女子達は、俺に彼女がいるのかを知りたかったみたいだ。彼女達のグループの1人が俺のことを好きになったらしい。しかし、洋介は今、彼女しか見えていない。まだ真理と付き合っていないが、いつか付き合いたいと洋介は思っている。


「おーい、どうしたの洋君?ご飯食べないの?」


 先ほど教室であったことを思い出していて、動き止まっていた洋介に真理から声がかかる。


「あぁ、ごめん。食べよっか!今日はお弁当なの?珍しいね、手作り?」

「フッフッフ、筋がよろしいなお主、なんと今日は私の手作りなのだ!洋君も少し食べる?」

「えぇー、真理の作ったお弁当か~、信用できないな~。」

「もーう!そんなこと言ってるとあげないんだからね~。」


そんな会話をしつつ昼食を済ませると、丁度昼休みが終わるぐらいの時間になっていた。真理は2年生、洋介は3年生なので行き先が違う。


「そろそろ昼休みも終わりだね、またね、洋君。今日帰りはどうするの?一緒に帰れるの?」

「うーん、そうだね、そうしよう!じゃあ俺、いつも通りの場所で待ってるね。」


 洋介は真理と別れた後、急ぎ足で教室に戻った。昼休みに真理から元気はもらったものの、しかし、昼上がりの5限の授業は退屈で、段々と眠気に誘われていってしまった。


 いつの間にか居眠りを始めてしまった洋介は、真理と出会った日の夢を見た。

 

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