第14話 リーダーは……
その広大な敷地には、
今、
模擬戦は行われた演習場より小さいながらも、実践的な訓練が行える多目的施設だ。
演習場よりも小さいためその数は多く、学園内の各所に設置されている。
その施設は日常的に多くの学生が利用しており、今も学内の至る所で『
そんな施設の一つで、純一と
今日は咲たちの提案で実戦形式の対戦を行う事になっていた。
4人とも普段の制服ではなく、学園から支給された身体にフィットする白黒の戦闘スーツ、『
「それにしても、やっぱりこの編成はおかしいんじゃないかな?」
「えー、だって
純一の言葉にそう答えたのは、両手に突撃銃型の『
「そうそう。むしろ、前衛が居ない私達ならハンデも欲しいくらい」
咲の少し後ろ、深愛と並んで狙撃銃型の『
「あ、ははは……」
苦笑いする深愛は、先が花弁のようになった杖を両手で持っている。
雫の言う通り、3人の持つ『
対する純一は、新しく心機保管庫から借り出した太刀型の『
「まあ、いいけどさ」
「よし!純一の了解も取れたから、早速始めよう!時間も限られてるし」
咲の言葉に4人は『
「そ、それじゃあ……訓練始め!」
最も後方にいる深愛の合図と共に、咲と雫が攻撃を始める。
2丁の突撃銃から無数の弾丸が放たれるが、それを純一は抜刀もせず縦横無尽に動き回る事で避けていく。
「うっそぉっ!何で避けられるの?!」
「そりゃ、沢山の『
驚きを露わにして攻撃を止めてしまった咲へ答えていると、鋭い視線を感じる。
感じたままに一歩、左へ踏み出すと純一の顔の横を弾丸が通り過ぎた。
「む……避けられた」
「狙いは良かったけど、流石にこの距離だからね」
そもそも、狙撃銃は狙われていると分からない距離から攻撃をする武器だ。
双方の姿が見えていて、攻撃されると分かっている状況での効果は半減どころの話じゃない。
「次は僕の方からいくよ!」
純一としては相当な手加減をしているのだが、咲たちにとって圧倒的なスピードで距離を詰めていく。
「くっ!!」
咲に肉薄した純一は、鞘ごと殴りかかる。
突撃銃をクロスさせることで受け止めたが、重い衝撃に咲の腕が痺れ地面に膝をつく。
「みゃーちゃん!雫!今だよ!」
「はい!」
「了解!」
それでも、純一の動きが止まった好機を逃さないように残る二人へ合図を送れるのは、出会った当初にも感じた視野の広さ故だろう。
その合図に間髪入れず反応する二人の姿に、この3人が長い付き合いでお互いの事をよく理解しているのが分かった。
そう考えている間にも雫からは弾丸が、深愛からは杖の先についていた花弁が分解され、五角形の小型機が向かってくる。
深愛などの回復特性を持つ心装兵は、純一や咲たちのように自分で戦う力を持たない。
これは、深い慈愛や思いやりの心を持つ者が回復特性を得る事に関連していると考えられているが、数少ない彼らを無防備に晒すのはあり得ないことだ。
そう言った事情の中で開発されたのが、深愛の持つ回復特性持ち用の『
『
13方向からの砲撃と狙撃に、溜らず純一は距離を取った。
純粋な近距離戦闘に対応が難しいチーム構成でも、それを補う連携。
そこに近接戦闘担当の自分が入れば━━
「これは、なかなかいいチームになるな」
笑みを零し、そう呟く。
「え、急に笑ってどうしたの?」
「いや、何でもないよ。僕もちょっと本気出そうかなって」
「うげ……分かってたけど、ハッキリ言われるとね~」
苦笑いを浮かべながらそう言う咲へ無言で笑い返すと、腰を落として柄を軽く握る。
「一瞬だから、しっかりと防御を固めておいてね」
すぐさま深愛の小型機が防御形態で展開し、3人とも『
それに呼応して『
「じゃあ、いくよ」
『
そして細く息を吐きだすと、一気に抜刀した。
「『
瞬間、驚異的な速度で踏み込んだ純一が深愛たちの視認できない速度で振るった一閃は━━
斬ッ!と音を立てて、小型機に纏われた『
それだけでなく、振り切られた太刀の余波が突風となって深愛たちを襲い吹っ飛ばした。
「キャアアアっ!」
予め防御を固めていたことと、純一が手加減をしていたお陰で怪我をすることはなかったが、3人とも折り重なるように倒れていた。
「イッタ~~イ……」
「むぅ、これは幸せの感触……」
「ふ、二人とも……苦しいよぉ」
一人だけ余裕そうであったが、何とか起き上がろうとする。
「3人とも、大丈夫?」
3人に手を貸しながら立たせる純一。
その姿を見ながら、3人は何やら頷き合う。
「じゃあ、アタシたちのチームリーダーは純一に決まりって事で」
「え?」
「異議なし」
「私もです」
示し合わせたかのような流れに、純一は今日の訓練の真意を察した。
確かにチームを組みはしたが、リーダーを決めたりはしていなかった。
「なるほど、これは一杯食わされたかな」
「気を悪くしましたか?」
「まさか、そんな事はないよ」
不安そうな顔で聞いてくる深愛に、優しく微笑みかけながら返す。
「でも、本当にいいの?一応、僕はFランクだけど?」
純一自身の気持ちとしては何も問題ないのだが、Fランクであるという事実がただ一つの気がかりだった。
そんな人間がリーダーになる事で、
「別に大丈夫。もともとランクには拘ってない」
「そうそう!
「そうですね。私も最初見た時はビックリしました」
「そっか、じゃあ喜んで」
かくして、チームリーダーは純一と決まった。
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