第189話 あっちもこっちも大騒ぎ

 大阪城の東側では25万もの兵が争う大乱戦になっていた。信勝本陣に近い信豊軍でも織田信忠、本多忠勝が戦中にあった。信豊本人も出陣したがっていたが、信勝本陣が危なくなった時の抑えとして残らされていた。前田慶次郎とともに。


 数日前から何度か結城勝昌の陣に出入りする者がいた。真田昌幸の使番だ。前田慶次郎は、最初は気にしていなかったがよくよく考えると何しにきているのか不審に思い一度後をつけたが撒かれてしまった。


「真田の者ならばあり得るが、自陣で見失うとは?」


 その次には違う者が来た。それも真田昌幸の使番だ。なんの用か?怪しいと思っていたら、結城勝昌が兵を連れて信勝本陣へ向かい始めた。慶次郎は


「おかしい、何かある」


 と勝昌小隊を尾行し、信豊陣から少し離れたところで、例の使番が道を塞いだ。


「どちらへ行かれる?」


「お主何者だ?わしの勘が正しければ風魔小太郎ではないか?」


「さすがは天下の傾奇者と言われる前田様。よくぞ気付かれた。気付いたからには生きては帰さぬが」


 大乱戦の裏で風魔小太郎対前田慶次郎の一騎討ちが始まった。






 信勝本陣では、


「上様。いや、兄上、お久しゅうございます」


 信勝の前に現れたのは結城勝昌だった。信勝の腹違いの弟で、今は下総の結城家に養子に行き家督を継いでいる。


「勝昌ではないか。元気そうで何よりだ。よう参られた、と言いたいところだが今は兄弟の再会を祝う状況ではない。どうしたのだ?」


 信勝は不審に思いながら久し振りに会った弟を出迎えた。勝昌は、


「兄上、父上はどちらに?」


「まだ到着しておらぬ。お市様が捕らわれたのは父上とて想定外であろう。恐らくこちらに向かっているところであろうが、現在の居場所は掴めぬ」


「相変わらずでございますな。失踪したり突然現れたり不思議なお方だ」


「で、どうしたのだ?佐竹と北条は戦線に出ていると聞いているが、結城は出ないのか?」


「どうも皆それがしに遠慮しているようで。千名の兵は戦線に出ておりますが、それがしは後ろで控えさせられております。それで、それがしの用件でございますが………」


 勝昌は懐から新型拳銃雪風改を取り出して信勝に向けた。信勝の旗本が慌てて信勝を守ろうとしたが、


「待て」


 信勝が止めた。そして勝昌に向かって話し始めた。


「何故だ、養子に出された事がそんなに嫌だったのか?」


「兄上にはわかりますまい。嫡男として武田家を継ぐ事が約束され父上の力で将軍にもなられて。次男のそれがしは弱小大名へ養子に出され、弟の信平よりも待遇が悪い。それがしは側室の子、信平はお徳様の子でござる。あの信長の孫ですけど父上が可愛いのはそれがしではなく信平でござる。さて、そろそろ時間でござる。ご覚悟を」


 時間?信勝が疑問に思った時、勝昌は引き金を引いた。勝昌は雪風改を撃ったことがない、それが幸いし弾はそれ信勝の後ろに控えていた旗本の肩にあたった。勝昌は続けて引き金を弾こうとした。その時信勝の意識の中にお市の言葉が思い出されていた。


『上様。上様に直接攻撃をしてくる者がいたら迷わず仕掛けを発動させて下さい』


 信勝は義足の仕掛けを発動させた。義足の弁慶の泣きどころにあたる場所から前面に向かって散弾が発射された。お市が『サイボーグ上様ね』と言っていたのはこの事だ。散弾は勝昌と、その周囲の旗本にあたり戦闘不能状態にしたが、勝昌が最後に撃った弾が信勝の胸にあたった。


「上様!」


 旗本が駆け寄るが信勝は一瞬倒れた後普通に起き上がり、まだ息のある勝昌に話しかけた。その横では勝昌が連れてきた小隊と信勝の旗本が争い始めた。


「勝昌。父上は決してお前の事を軽く見ていたわけではない。関東を抑えるためにお主には損な役回りをさせてしまったのは事実だが武田にとって必要だったのだ。この戦が終われば、武田の親族として百万石相当の領地を与えることになっていた」


「あ、兄上。それがしは兄上を討てば将軍にし、してやると関白に……、小太郎という者が……」


 勝昌は息を引き取った。


「勝昌ー!ええい、秀吉め、許さん。その者どもを蹴散らせ。信豊に伝言を、結城が裏切ったと直ぐに伝えよ!」


 さて、銃弾が旨を直撃した信勝は何でピンピンしてるのであろうか?その答えはお市作成のベストにあった。鉄板が仕込まれており、いわゆる防弾チョッキになっていたのだ。信勝は時間というのが気になっていた。勝昌の言っていた時間とは何だ?その答えが戦場に現れた。


 突然真田本陣が空からの攻撃を受けた。大阪城からハンググライダーが飛び立っていたのだが陸地が大乱戦になっていて空の警戒が疎かになっていた。それを合図に結城軍千名が反転し真田信綱を襲ったのだ。


 不意を突かれた真田本陣は信綱本人が槍を振るうほどに追い込まれた。そこに前田慶次郎が鬼の形相で結城軍に突っ込んだ。


「真田様、助太刀いたす」


「かたじけない。お主、大怪我をしているではないか?」


「気にしないでいただきたい。まずはここを」


 慶次郎は槍を振り回して敵をなぎ倒していった。さて、風魔小太郎戦はどうなったのか?


 その時上空で連続した銃撃音がした。気球が浮いていてハンググライダーを撃ち落としていた。そう、怒露駿技愛ドロスギアから離陸した熱気球3機のうちの1機だ。搭乗者は3名、マシンガン雨嵐乱連アメアラレを装備している。


 毛利軍は真田の陣形が乱れたのでそこを突こうとしていたが、ハンググライダーが落とされた事に気付き、上空の気球を見つけた。気球を撃ち落とそうと鉄砲や矢を射るが空中高く浮いており矢は届かないし鉄砲は当たらない。ハンググライダーを撃ち落とし終わった気球は毛利本陣、その後ろに控える黒田官兵衛軍に向かって上空からあの浜松城を焼き尽くした亡波呀無断ナパームダンを落としていった。上空からの攻撃に手も足も出ない毛利、黒田軍。一瞬形勢は豊臣に傾いたが、気球の活躍で再び武田に傾いた。その時、上空に凧が現れた。

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