第48話 北条攻め
武田軍は、再び駿河に出陣しあっという間に田子の浦まで駆け抜けた。途中の支城を無視して箱根の山を見ていた。
信玄は前回逃げる様に駿河から撤退したが、これは北条と徳川が手を結んだからである。さらに、北条は上杉にも和睦を申し出てる事が、忍びの調査でわかっていた。
上杉が簡単に北条と手を結ぶとは思えないが、この三方の同盟が実現すると武田は徳川、北条、上杉に挟まれ身動きが取れなくなってしまう。
今回の戦は今のうちに北条に武田軍は強いよ〜、こっちと組んだ方がお得だよ〜と思わせる為の作戦である。
この作戦は勝頼が軍議で提案した。重臣方は勝頼が贈った武田1号がお気に入りで誰も反対しなかった。
まあ勝頼は武田の跡取り、おべっかも含まれていたのが実情である。
北条を全軍で本気で攻めれば、小田原城を落とす事はできるだろう。だが、その間に徳川と上杉が信濃を攻めせっかく長年かけて手に入れた領地が奪われてしまう。
なので、今回は武田軍の強さを北条に知らしめ、和睦し、ついでに駿河に楔を打ち込む事を目的としていた。
田子の浦に陣をはった武田軍はまず、三島の山中城を攻めた。ここには勝頼、従兄弟の武田信豊、軍監として山県昌景が同行した。兵は三千である。他の軍二千は箱根の山を登り小田原城を牽制した。
信玄から無理はするなと言われていたが、北条に一泡吹かせる作戦なので、勝頼はさっさと攻めはじめた。従兄弟の信豊は若いが勝頼に負けないくらい戦闘好きで、自ら突っ込んでいくタイプの武将である。
この2人は仲が良い。何となくどっちが沢山敵の首を取るか、競争するふんいきになっていた。
「お先に!」
勝頼は敵の城門の前に鉄砲避け、弓矢避けの鉄の盾を並べ、敵の乱射攻撃を受け止めたあと、敵の鉄砲隊、弓矢隊、城門守備兵を狙ってボーガンから炸裂手榴弾 桜花散撃改を発射した。
『どっかーーーーん!』
爆裂音と共に上空から高速で発射される大きさ3cm程の無数の手裏剣。敵に突き刺さり戦闘不能にしていく。
前回使用した桜花散撃はマキビシをばら撒き、敵の動きを抑制する効果があったが、この桜花散撃改は、味方が進軍するための道を作るために改良を加えたものである。
マキビシだと味方も通れなくなるからね。上手に使い分けないとです。
よし、決まった! と思い進軍を指示しようとしたら横を信豊軍が城門に向かって突撃していた。
「勝頼殿。先陣はいただく。キラッ!」
キラッ!じゃねえだろ。何がキラッだ。いいとこ取られた。と、その時楓から側面に隠れてる敵50人程がこちらを狙ってるとの情報があり、その方向を見た瞬間、敵が勝頼に向かって攻撃しようと飛び出してきた。
「楓!」
勝頼と楓はリボルバー式拳銃 雪風を連射した。奇襲したつもりの敵は突然銃撃され怯んだところを高さん含む勝頼護衛隊に一瞬で制圧された。
「おい、5発しか撃てなかったぞ。助さんめ。回転不良だな。何だろ、加工精度かな?」
「私は6発全部撃てましたよ。」
楓は嬉しそうにドヤ顔で答えた。頭きたのでデコピンしてやった。
そうこうしている間に信豊軍は三の丸を制圧、二の丸攻撃に入ろうとしていた。
勝頼が進軍しようとした時、伝令が山県昌景のところに届いた。小田原城から敵軍が出てきたとの事。
信玄から田子ノ浦まで戻るようにとの指示だった。
勝頼は信豊に引き上げるよう伝令を出した。
山県昌景は、若い2人の戦闘を見て素直に嬉しかった。不思議な武器を使う勝頼。戦況を見て素早く動く信豊。今後この2人が協力して武田を引っ張っていく事を切に願った。
田子ノ浦に引き上げながら勝頼は信豊の事を考えていた。
「信豊は一門衆。彼を味方にできれば。」
家督を継いだ後のことを考えながら帰陣した。
北条の軍議である。
「武田はこの小田原城に攻めてくるのでは?」
「いや、小田原に来ると見せかけて駿府へ向かうはずだ。小田原城はあの程度の戦力では落ちない。」
「だが、あっという間に山中城は三の丸まで攻められた。もう少し味方の応援が遅れたら城は落ちていたかもしれん。」
「上杉との和睦はどうなった?」
「人質の要求と、北条の城を3つ返せと。元々は上杉の城だと。」
「ふざけるな、我が北条軍が戦で手に入れた城を返せと。できるか、そんな事が!」
北条家は、氏康が隠居し息子の氏政に家督を譲っていた。氏政は揉めに揉めた軍議に結論は出せず、武田の様子を見ることになった。
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