第30話 真田昌幸を手懐ける
「この情報は武田からではない、織田の間者が接触してきた。どうやらこの四郎がどんな男か見てくるよう信長に言われたらしい。悟郎、城の周りはいい、自由に見させろ。だが、工場へは近づけさせるな。俺も暫くは近づかん。格さん、暫くは工場へは行くな」
「実は城の地下から工場までの抜け道はございます。以前殿から聞いた地下鉄なる物を作ろうとしたのですが、百田殿に断られました、それどこではないと。それ故にただの抜け道ですが」
おい!抜け道でじゅうぶんだわ、地下鉄ってあんた。勝頼は反省した。格さん舐めたらあかん。
助さんもいっぱいいっぱいなんだね。もっと楽しく仕事できるようにしないとかな。
「で、織田の間者なのだが名を沙沙貴綱紀という。沙沙貴といえば源氏の家柄。余の勘だがまた現れる気がしている。悟郎、今度来たら会わせる。技術情報は流すなよ。で、本題だが」
勝頼は初陣に向けての方針を説明した。
場を解散して、昌幸だけを残らせた。
「昌幸、真田家は智略に優れると聞く。砥石攻めは見事だったそうだな」
「真田は先程話の出た室賀殿同様、小県の一豪族にすぎません。生き抜く為には知恵と力が必要なのです」
「おまえには期待している。これから俺の全てを見せる。お主を信じてだ。例えお屋形様だろうと、真田家の者であろうと他言無用ぞ」
勝頼自ら地下室を通って、工場へ案内した。
「おお!何ですかこれは。初めて見るものばかりですぞ。この灯りは何ですか?油を使って、いや、匂いがない。この鉄の塊は、え、いや、これは、」
初めて遊園地を見た子供みたいになってました。
「これは、電球という。電気の力で光っている。で、この箱を電池といい、この中に電気が貯まっている」
「?????、電気とは何なのですか?」
まあ、教えてもいいか。どうせ盗まれてもそのうち電池切れるし。
「雷はわかるか?」
「天がお怒りになると出るあれですか」
「………」
格さんはすぐに理解したんだけどなあ。
とりあえず、電気が流れると火花が出る事を静電気でバチッとさせて教えた。
「次に新型鉄砲だ。ここでは火縄銃の生産もしているが新兵器の開発もしている。この新型鉄砲は、火がなくても撃つことができる」
助さんに1台持ってこさせた。
「昌幸、撃ってみろ」
昌幸は見よう見真似で的を狙った。撃った瞬間尻もちをつき、
「このような物があるのですか」
と震えながら呟いた。
「で、なぜこれを某にお見せになったのですか?」
「この先何があろうと余に仕えてもらいたいからだ。余は天下統一を考えている。父上でも兄上でもない。ましてや信長でもない。余が天下を治める。その手助けを頼みたい。まだその時ではない、いずれ時が来る」
昌幸は新型鉄砲を欲しがったが、武田重臣に配ってからと言うと納得した。
昌幸は信玄、真田家よりも勝頼に忠誠を誓う事を明言して古府中へ帰っていった。
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