第27話 織田の間者
次の日の夜にお幸が忍んで来た。楓との事を聞いて、ズルイだと。
まさかのモテ期到来。自分ではわかってなかったが、勝頼は美男だそうだ。
前世で縁のない言葉なので他人事にしか聞こえなかったが、転生にもいい事があるんだね。
楓とお幸は交代で相手をするよう相談しているみたいで、不思議と鉢合わせしなかった。聞いたら忍びなので側室とかにはならないそうだ。護衛につくときに吾郎からこうなる様言われてたそうだ。
実際の勝頼はどうだったのだろう?確か織田信長の養女と結婚したんだよな。側室いたっけか?
翌日再び工場へ行った。助さんは2台目のハンドガンに失敗して、コツがわかったと笑顔だった。このおじさん、いい人なんだよ。大事にしないとね (この後もっとすごい物を作ってもらうから、腹黒いな、俺。
「百田殿、今日から夜は電気を使って工場を明るくする事。電球はだいぶ蓄えたし、予備の電池もある。電池の性能確認が目的だ、決して徹夜をしろという意味ではないからな。徹夜はするな、多少はかどればそれで良い」
いつも助さんとしか言わない俺が百田殿なんて呼んだのでかしこまってしまった。
それが狙いなんだけどね。こう言わないと本当に徹夜して身体壊しちゃうから。
「どの位明るくしていいでしょうか?」
「工場全体でいいぞ。どんどん消費してどんどん作れ、それで製造部の腕も上がるだろう。フィードバックじゃない、どの位長持ちしたか、どうだったかを技術部に伝えろ。技術部には性能を上げるように言っておけ」
電気については考えている事がある。ただ、簡単ではないので先ずは腕を上げてもらわないと。
秋になった。日々の騎馬、剣術、体術の訓練は欠かさずいるが、食生活は相変わらず貧しい。米がない、海の魚がない。でも俺は前世でカップヌードルばっかり食べてた。
我慢できちゃうもんねー。でもたまにはいい物食べたくなるのが現代人のサガ。
という事で、栗を拾いに山に入った。
しばらく歩いてたら急にお幸と楓が身構えた。背後の藪から中年のおっさんが現れた。
「武田四郎様とお見受けする。拙者、沙沙貴綱紀と申す者。織田信長様に仕えております」
「こんな場所で何をしておる。ここは我の領地ぞ」
「実は川中島の帰りに噂の四郎様のお顔を見たく待っておりました」
「信長の命令か、川中島の帰りと申したな。お主時間はあるか?」
川中島の結果が聞きたかったが、信長への報告もあるだろうからな。どういう返事をするか試してみた。
「殿への報告は別の者が既に行なっております。お気遣いなく」
沙沙貴は試された事がわかったが、正直に応えた。
「沙沙貴とは、聞いた覚えが………。沙沙貴神社と関係があるのかな?」
「!???」
沙沙貴は驚いた。想定外の、しかも知られるはずのない事が山猿と思っていた勝頼から発せられ、つい顔に出てしまった。
「どうじゃ、一緒に栗拾いでも。その後栗を食べながら話をしないか?」
沙沙貴は気が動転しつつうなずいた。
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