第26話 銃

川中島従軍を許されなかった勝頼は、高遠城へ戻った。楓がやってきて


「吾郎様が工場へ来て欲しいと言ってました」


楓と一緒に馬に乗って山へ向かった。楓を前にして抱きかかえるようにして馬に乗っていたら、急に男が目覚めた。楓は拒まなかった。実は待っていたそうで、なかなか手を出さないので魅力がないと落ち込んでいたそうで。


ごめんね。おいらも初めてなもんで。しかし、これは良いものだ。子供たくさんいた方が後々に楽になるはず。よし、頑張ろう。


「吾郎、参ったぞ」


「随分と時間がかかりましたな」


「いや、途中で腹が痛くなっての」


「それはいけない、村井殿の薬でも」


「もう治った。心配かけてすまん。で、何用だ」


「殿のご希望の銃という物ができました。百田殿が何とか出来たと申しております」


百田って誰だっけ、あ、笑顔が一番の助さんだ。



工場に入った。そこは、中学の体育館くらい広かった。その中が数ブロックに別れ、鉄を溶かす所、ガラスを作っている所、鉛から弾を作る人、火薬を作る人等エリアで区分され分業されていた。


「鉄砲と火薬、鉛弾は順調に量産できています。すでに鉄砲300丁、鉛弾は10000発用意できました」


「鉄砲はいくらあっても良い。工作部と製造部に増員は出来るか?高遠城主になった。必要なら人は集める」


「それでは20人ほどお願い致します。鉄砲は図面はありますが加工が難しく誰でもというわけには行きません。教育するのに増員したく」


「あいわかった。俺が頼んだ科学忍法はどうなった?。」


「今少しお時間を、調整に難儀しております」


「来年は初陣だ。そこでお披露目して、武田に四郎ありと世に知らしめる」


 話しながら歩いて工場を抜け裏地に建てられた別棟に入った。


「殿、お待ちしておりました」


「助さんや、どれ、見せてみい」


そう、日本初のハンドガンがそこにあった。










当時の銃は火縄銃であり、火がないと弾は撃てない。また銃身から弾をこめる為、装填に時間がかかるので、威力は膨大だが取り扱いは大変だった。




そう、勝頼は弾でなく弾丸にしたのである。モデルはワルサーP38、 え、なんでって?

そりゃわかるでしょ。男の憧れよ。ただ、弾が1発しか撃てない。1発撃ったらスライドさせて弾を装填する。


「助さん、撃ってみろ。そして撃ったら弾を交換だ。」


助さんは的を狙って撃つ。7点てとこかな、ハンドガンなら上出来でしょ。


「当たりました。今まで何度撃っても当たらなくて、1発撃ったら壊れたり、やっとの事でここまできました」


助さんはすっかりハゲてしまった頭をさすりながら抜群の笑顔を向けてきた。


「良くやった。褒めてつかわす。この銃を武田軍重臣の方々に贈り物とする。弾も3発つける。出来るか?期間は1年じゃ」


助さんの笑顔が消えました。青くなったぞ。

こんなもんじゃないよ、まだまだ作ってもらわないと。




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