第22話 兄との会談
兄上との約束の時間に部屋へ取り次ぎを頼んだ。これも間者に見られてるのか。
他の転生物なら気配探知のスキルとかありそうなんだが、全くわからん。
「兄上、昨日お土産をお渡しするのをうっかりしておりました。諏訪の味噌と、疲れを癒す茶でございます」
「疲れを癒すだと、そんな茶があるのか?」
「諏訪に生える草から取った物ですが、香りがいいのと何か一息つける味なのです。それがしも飲んでおります」
「ありがたくいただく。四郎は塩硝を作ったそうな。どうやったのじゃ?」
「父上には教え申しましたがとても作れそうもないと、それがしに任せると
おっしゃられました。それ以来他国へ漏らさぬよう秘密にしております」
「わかった。だが、どこで学んだ?諏訪家にそのような秘伝があったのか?」
「夢にでて参ったのです。これも諏訪大明神のご加護かと」
「本当か、何やら伊那で人を使い不可思議な物を作っていると噂になっておるぞ」
「そのような噂があるのですか。何せ山の中にいる故、暇を持て余しているのです。武田家にお役に立てるなにかを探しているのです」
「今日はその何かを見せてもらえるかと思っていたのだが」
「お見せできるような物はまだ………。そんな事より、兄上にお話があって参ったのです。父上は大局を見て戦をされているように思われます。
恐らく上田原での敗戦を反省し、目先の利ではなく、将来の武田を考えた戦略を立てています。兄上におかれましては、父上と意見が合わない時、意見は言うべきですが決して父上には逆らわずに従って頂けますようお願いに参りました」
「四郎、わしを馬鹿にしておるのか。お前に言われる事ではない」
「兄上、実は夢で見たのです。兄上のご意見は正しいのです。ですが、父上はそれを怒り、別の策を取られた。兄上は面白くなく父上に逆らった。そんな夢を見ました」
「また夢か、都合のいい夢を見るのだな」
「兄上、この四郎。兄上を助け武田家を、そして諏訪家を守りたいのです。
今は頭の片隅に置いておくだけで構いません。もしそのような時が参りましたら、今日の四郎のたわごとを思い出して下さい」
「わかった。しかし12歳の子供の言葉ではないな。本当は何歳になる」
「45になります」
「ハッハッハ、見事じゃ四郎。今日の事、忘れまいぞ」
勝頼は翌日諏訪に戻ると諏訪、高遠、伊那の主たる者を集めた。
「我はまだ子供に見えるかもしれん。だが、そなたらの主人だ。我は諏訪の当主だが、武田の四郎でもある。武田、諏訪の為に力を貸してもらいたい。
まずは、百姓の次男、三男等、食い扶持に困っている者は城へ出頭するように。
当面、百姓と城仕えの時間を半々とし、訓練を行う。殆どの者は足軽であろう。
だが、鍛え上げる、鍛え上げれば1の力が2にも3 にもなる。飯は食わせる。我のために働いてくれ」
百姓から武士への転換で、兵力増強を行った。
それ以外に俺の指示を的確にこなす指揮官を警備隊から5名選び、侍大将とした。初陣までに一人前にしないと。
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