第6話 路線拡大

「起きて朝だよ、お兄ちゃん」


 揺さぶられ、目を開けると碧眼ロングヘアの美少女がいた。日の光がレースカーテンから差し込んでいて神秘的な雰囲気を出している。


「…天使?」


「ふふっ、天使って。お兄ちゃん寝ぼけてるの?」


 口元を軽く押さえて笑う天使。


「あ、ルナちゃんだった……うっ」


「ど、どうしたの?」


「いや、起きたら誰かいるのに感動してしまって」


「……そんなに寂しかったの?……ふふ、頭なでなでしてあげるね?よーしよーし……」


 いきなり頭を撫でられ困惑したもののルナちゃんの手のひらの温度が優しく伝わってくる。あっ、天使じゃ無くて聖母でしたわ。


 されましたわ。


 ―――




【ルナちゃん視点】



 ……こういう攻める路線でもアリかも……ヤバい、お兄ちゃんが可愛い……犬みたい……うへへへ……




 ―――





 朝ごはんにキーマカレーの残りで作ったカレードリアが出てきた。最高に美味かった。


「日曜日に手作りの朝ごはん食べたの久しぶりだわ」


「えぇ…じゃあいつも日曜日何食べてたの?」


「菓子パン」


 土曜日にだらけてしまって料理する気力が無くなり夜ご飯はだいたい冷凍食品になるから仕方ない。


「菓子パンは美味しいけど……もっと自分の体を大切にしなきゃダメだよ?」


 男に風呂に一緒に入ろうよとか言う別の意味で体を大切にしてないルナちゃんがそれを言いますかね……とは口に出さない。


「はい。分かりました。菓子パンはたまにお菓子として食べます」


「よろしい」


 満足気に頷くルナちゃん。


「ルナちゃんって菓子パン食べるの?」


「もちろん!最近はチョコチップステックのやつとか……ボケモンパンとか昔食べてたし。シールが欲しくて」


「ボケパンなっつ。シール水筒に貼ってたなぁ……」


 ド田舎のスーパーだからたまーにしか入荷してくれない。小さい頃親とスーパーに行った時はお菓子売り場に行く前にパン売り場行ってたっけ。


「ねぇ、お兄ちゃん!」


 どこかうずうずした様子でルナちゃんが言葉を発した。


「ん?何?」


「行きたいところがあるんだけど、連れてってくれない?」


「どこ?」


「水族館!」



 ―――





 水族館とか何年ぶりだろうか。小学生の時の修学旅行で行った以来か。あんまり当時の記憶が無い。


「水族館なんて小学生の時ぶりだよ!」


「おぉ……ルナちゃんテンション高いね」


「そりゃあ楽しみだったからね!久しぶりに、しかもお兄ちゃんと水族館に行けるの!」


 キラキラしたルナちゃんの笑顔にドキッとする。やっぱり2次元でも3次元でも女の子は笑顔が1番だと思う。


「ちゃんと調べて来たからねー!大人の女だよー!」


「さ、流石ルナちゃん!俺にはできないことを平然とやってのける!」


「そこにシビれる」


「憧れるぅー!」


『いぇーい!』


 イカれたノリでルナちゃんとパチンとハイタッチする。


 俺が実家に残したオタク養成キッド(漫画・ラノベ・ゲーム)のせいでルナちゃんは立派なオタクになっていたようだ。

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