0-2

―――


「シアンッ!お前、また時計台から飛び降りたな!?あれほどやめろって何度も言っただろーがッ!」


 ただいま、と声をかける前に怒鳴り声を浴びる。それから、拳骨が降ってきたのを、咄嗟に避けた。


「おい!避けんなよ!」


「…ぜったいに、痛い。」


 嫌だ、という意思表示を、首を振ることで示しつつ、「リーダー。…ただいま。」と目の前で怒鳴っている男にそう呼び掛けると、リーダーははぁ、と溜め息をこぼした。


「…おかえり、シアン。」


 少し苦笑をこぼしつつ言ったリーダーは、最後に小さく笑みを見せてくれた。その表情に少し安心を感じつつ、「…報告。」とボソリと言うと、来い、というように顎で奥を指した。


 リーダーの後に続いて奥へ進むと、本部に帰ってきていた人たちが、次々に「おかえり。」と声を掛けてくれることに、あたたかいものを感じる。

 …少しそれに、戸惑いも感じていた。


「オレェにもぉ、おかえりぃ、欲しいなぁ。」


 いつの間にか、チュンは透き通るような白い髪、毛先はピンクに染まっていて、鳥の姿と色合いは変わらない。僕と同じブラウンの瞳は少し浮いている気がする。そんなチュンの姿を見ながら、周りの声に耳を傾ける。すると、「シアンもチュンもおかえり。」という言葉が聞こえ、「ただいまぁ。」と上機嫌な相棒の声に少し口元が緩んだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る