第9話『ティータイムはアナタとともに』
『ティータイムはアナタとともに
-プロローグ-』
いらっしゃいませ、お客様
霧を纏う屋敷に迷い込めば、薔薇が美しく咲き誇る庭に案内されることでしょう
彼らの暇潰しにお付き合いくださいませ
語るは庭師
さあ、今日はどんなお話が聞けるのでしょうか
Sit down please?
生きて帰しはしませんよ?
『ローズティーとクッキーの時間』
これは吸血鬼お嬢様と後の館の旦那様のお話
霧の屋敷に辿り着く
一人の坊っちゃん、一目惚れ
視線の先には幼い少女
A girl meets a little little boy.
And she says ,you are very very young.
So …
帰れぬはずの館から
一人かえされる、小さな坊っちゃん
少女を忘れることできず
毎年バラを贈ります
愛しい少女へ贈ります
大人になった坊っちゃんは
未だ幼い少女へと
贈り物を差し出します
僕から貴女へおくるもの
それは永遠の愛と誓いの指輪
遥かに年上の少女から
大きくなった年下の青年へと
贈り物を差し上げます
私から貴方へおくるもの
それは永遠の命と誓いの口づけ
そうして彼らは幸せに暮らしますとさ
これらを語るは庭師なり
今日のメニューをご覧あれ
まずはこちらにローズティー
まるでそれは血のように紅い唇のよう
それと、傍には日に当てれば灰のように脆く崩れるクッキー
これぞ吸血鬼セット、で、ございます
これは霧に隠れた屋敷をめぐる、カレラの物語
『吸血鬼お嬢様』
霧を纏う屋敷に住まう
一人の幼いお嬢様
一人の庭師を引き連れて
今日も優雅にティータイム
お腹がへったわ
誰かいない?
妖しい笑みを纏わせて
尖った牙を光らせる
彼女は吸血鬼お嬢様
ちょっとのワガママ
ご容赦を
ようこそ、彼女の遊戯の時間
楽しい時間を過ごしましょ?
『ロリータ・ナイトタイム』
ようこそ、私の遊戯の時間
今日は何をしましょうか
月が照らす夜の時間
それは「私」の楽しい時間
お手をどうぞ?旦那様
紅茶をちょうだい、私の庭師
歌を聴かせて、人魚さん
不思議で不思議なこの世界
退屈なんて似合わない!
せっかくだもの
楽しい時間を過ごしましょ?
『マドレーヌとミルクティーの時間』
これは青の人魚とハイな天使のお話
霧の屋敷のすぐ近く
綺麗な歌声
アナタを惑わす
♪おいで、おいで、こっちへおいで♪
青の人魚が歌ってる
ひとり残った人魚姫
今日もひとりで歌ってる
雨の人魚は足を得て
青の人魚を置いてった
兄妹だったはずなのに
ひとりで歌う人魚姫
淋しささえも霧の中
ある夜あらわる吸血鬼
歌を気に入り屋敷を建てる
今いる貴女は何代目?
幼い少女は答えない
独りで歌う時は過ぎ
幾多の観客
飽きは来ず
人魚は今日も歌ってる
霧に紛れて歌声響く
♪おいで、おいで、こっちへおいで♪
向かう先には何がある
ある日どっかで捕獲され
捕まる変な天使あり
鳥籠の中からこっちを見てる
人間ごときが頭が高い
笑ってこっちを品定め
籠から出ても人を見て
嗤って悪事をバラしてる
だってあいつが悪いんだもん
天使は上から指を差す
そんな天使が耳にした
人魚姫の歌声を
一目惚れだと彼は言う
変な天使の変な恋
♪一緒に歌おう♪
天使は言う
♪おかまいなく♪
と、人魚は言う
ふたりの歌は重なって
霧の中で響いてる
ちょっと変な歌だけど
この組み合わせは悪くない?
今日のメニューはマドレーヌ
貝の形のお菓子です
それと、お飲み物はこちらをどうぞ
ほんのりホットなミルクティー
白い天使のお気に入り
これらを語るは庭師なり
今日も歌声響いてる
明日もきっと、響いてる
人魚は知った
誰かを待つ楽しみを
天使は知った
穢れのない歌声を
互いが互いに一目惚れ
今日も彼らは待っている
♪ソロの歌声♪
♪デュエットに♪
♪変わる至福のふたりの時間♪
これは彼らの物語
歌声響く、物語
『青の人魚』
Blue blue mermaid is singing.
今日も歌声霧に混ざる
一人の人魚のソロ・コンサート
今宵も迷う観客が
我らの獲物と成り果てる
おいで♪おいで♪
手招き歌う
彼女は青の人魚姫
なんとも綺麗な歌声と
惑わされたらThe End
ようこそ、彼女の青い舞台
Now, it's show time.
『ブルー・アクアライン』
ようこそ、私の青い舞台
今日は何を歌いましょう
月夜が照らす水の底
それは「私」の無音の空間
また来たの?変な天使
歌を聴きたい?お嬢様
ご機嫌いかが?庭師さん
不思議で不思議なこの世界
音がなくちゃつまらない!
さあさあ、今日も開演よ
Now, it's show time.
『木苺のタルトとホットチョコレィトの時間』
これはおおかみ少女と無口な狩人のお話
もしもあなたがこの森で
狼連れた狩人に
出会ったら
昔々ある村に
少女と少年いましたよ
その村にある決まりごと
古い古い決まりごと
彼らにとってはすごくジャマ
少女は嫌いな男に言う
「貴方だけを愛してる」
ほんとは「嫌いよ、どっかいけ」
少年は嫌いな女に言う
「世界で一番愛してる」
ほんとは「こんな雌ブタ他に知らん」
彼と彼女は両思い
だけど思いは言っちゃダメ
そういう村の掟なの
無理矢理繋がれた赤い糸
繋いだ先には嫌いな相手
嫌いな相手に好きと言え
そういう村の掟なの
望まぬ相手を「好き」になり
望む相手を「嫌い」になる
それが村の掟なの
少女と少年、一緒に育ち
生きた年数両片思い
それでいいと思ってた
だけど思いは重く募り過ぎ
少年は嫉妬に酔い狂う
「どうしてあいつが思いを奪う」
少女の糸の先を斬る
自分の糸の先を斬る
真っ赤に染まる糸の先
両手は赤く罪に染まる
斬っても斬っても思いは叶わず
少女は哭いて罪を悔い
崖の下に落ちてった
「言えばよかった」
「言わなければよかった」
落ちても落ちても思いは叶わず
落ちた先でも一人で思う
想う相手はいつでも一人
堕ちた先でも一人で思う
想う相手はいつでも一人
あなたがいればそれでよかった
結局二人の想いは叶わず
一度目の人生
最期まで
二人はずっと両片思い
想う視線は互いを見てた
だけど手と声は伸ばせない
そういう村の掟の話
くだらない村の掟の話
村には変わらず夜が来る
あの日と同じ月が昇る
今夜も赤く、赤い月
赤く染まった、赤い月
時は流れて幾人生
二人は赤い月に呪われた
何度も生まれ変わっても
呪いは解けず
少女は獣の姿となって
少年は声を失った
けれどもそれが印となって
何度も生まれ変わろうと
彼らは彼らを見つけ出す
呪いを解く方法はただ一つ
想いを告げて実らせる
狼となった少女には
愛を告げる素直さなんて
どこにもない
おおかみ少女は嘘をつく
声を失った少年には
愛を告げる言葉なんて
どこにもない
いつでも赤い目だけが語ってる
だけど何度も生まれ変わろうと
彼らは互いに恋をする
想いはいつも変わらない
告げることない愛だけを
心に灯して生まれ来る
赤い月の呪いとは
永久の愛を試すための贈り物
彼らは決して呪いは解かず
今日も森には赤い月
狼連れた狩人が
獲物を探して走り去る
おおかみ少女は寄り添いながら
獣の言葉で愛を吠える
無口な狩人は得物を構え
声なき声で愛を叫ぶ
今日も森には赤い月
彼ら二人の狩の時間
二人だけの至福の時間
もしもあなたがこの森で
狼連れた狩人に
出会ったら
決して彼らを邪魔するな
彼らはあなたをお呼びでない
おおかみ少女は牙を剥く
無口な狩人は刃を向ける
どうです?
彼らほどの意思疏通
言葉なんて必要ない
獣のように躍り狂ったその愛を
言葉でしつける必要ない
今宵も愛に
狂ってしまえ
『おおかみ少女』
月夜に吠える
茶色い獣
己を偽り
他を偽り
遠吠えあげて、走り去る
わたしはおおかみ少女だからと
独りを好んで友を作らず
わたしはおおかみ少女だからと
孤独に怯えた心を隠す
唯一寄り添う主人には
理解されるその想い
天の邪鬼な獣が抱える愛情は
勇敢な姿とはほど遠い
『チコ・レイト』
今日も彼女はおおかみ少女
お願い、わんちゃん
こっちを向いて
勇敢な獣?そんなの嘘よ
ほんとは恥ずかしがってる女の子
好きな彼に告白できない女の子
嫌い×嫌いで大好きよ!
好きで好きで噛みついちゃう!
愛しく可愛いおおかみ少女
彼女の想いは
あまぁくとろける
チョコレィト
『コーヒータイムはあなたとともに』
これはコーヒー好きのとある魔女と黒猫の話
月が綺麗な、ハロウィンの夜の話
今朝も魔女はパンを焼く
彼女のお手伝いは売れ残りのパン人形
砕いた命を注いで作った
パン人形
いらっしゃいませ、お客さま
なんちゃって
今日は何のパンをお望みかしら?
死んだ命はよみがえらないと
「いのちのルール」は語ってる
それでも望んだ愛しい命
ダレカアノコヲカエシテヨ
誰があの子を壊したの?
お前があの子を壊したの?
かえしてかえしてあの子をかえして
私の愛しい黒猫かえして
愛する黒猫奪われても
死者を蘇らす禁忌は犯せず
それでも魔女は考えた
自分のできる術を探した
辿り着いた魔術の果て
終わった命を砕きに砕き
涙とともに器の中へ注ぎ込む
できるものは
役目をさがす生きた人形
思い残したもの思い
今日も彼らは動いてる
思いを晴らすそのために
今日も彼らは動いてる
しかし魔女は出会えない
愛しい愛しい黒猫に
生きた人形
その中は
砕いた命が入ってる
何かが欠けて入ってる
魔女の名前を忘れてしまった黒猫人形
彼らは名前をもう呼べない
あんなに愛した相手なのに
それでも魔女は奇跡を待った
愛する自分の黒猫が
もう一度自分の名前を呼ぶ瞬間を
季節は巡る
我らの森は時間を刻む
記録の森は記録した
幾夜も幾夜も月は輝き
世界を優しく見守った
♪今夜は楽しいハロウィン・ナイト
お菓子と悪戯、どっちを選ぶ?
♪ルール無用のこの時間
遊んで、食べて、襲っちゃえ!
生きた人形
列を作って思いを晴らしに旅に出る
最期の思いを叶えに旅に出る
魔女は笑って見送った
帰ってこなくていいのよ、と
帰ってきてもいいのよ、と
笑って彼らを見送った
そんないつものハロウィンに
とうとう奇跡が舞い降りた
夜が明けた新しい朝
今日も魔女はパンを焼く
手伝うのは一人の青年
猫耳帽子の黒い髪
彼は優しく名前を呼ぶ
彼女は笑顔でなぁにと答える
二人に奇跡は舞い降りた
テーブルの上にはコーヒーを
ゆっくり注いでご用意しましょう
きっと待つ時間だって悪くない
だってその1杯のコーヒーと
その時間は
あなたのためだけに用意された
素敵で特別な1品だから
不思議で不思議なこの世界
不思議に溢れた素敵なこの時間
コーヒータイムは待ち焦がれた愛するあなたとともに
『たのしいハロウィンナイト』
♪今日は楽しいハロウィンナイト
誰もがみんなモンスター
騒げや 歌え 呑め 食らえ
隣が消えても気づかぬよう
今夜は楽しいハロウィンナイト
あまぁいお菓子は誰のもの?
キャンディ クッキー パイ ×××
なくなる前に奪っちゃえ
今日は楽しいハロウィンナイト
いつもの外へ飛び出そう
光も闇も関係なく
一夜(ひとよ)の宴に狂い舞え♪
『砕命の魔女』
砕け
砕け
世に散った命を掬い上げ
残る思いごと砕いてみせよ
細かく砕いてみせたなら
器を作って注ぎ込め
器は生きた人形となり
思いを晴らしに動き出す
命が黒く染まったなら
砕いて粉々にしてみせよ
次なる命が染まらぬように
粉を注いで器を動かせ
それは彼女の優しさだ
『魔女の黒』
小さき黒い獣
魔女の隣に在り続けよ
一度は失ったその命
二度目の機会を手に入れて
命の限り使命を果たせ
黒い猫は魔女の相棒
隣に在り続けることこそが
彼の命を使う理由
魔女の黒い猫は隣に寄り添い
二度と離れぬと
誓いを立てる
今日も明日も
魔女の隣に黒猫あり
『モカ・ウィッチ』
ある日
森の中
魔女のパン屋さんを
見つけたら
よっさよっさと働くパンたちを
見かけるでしょう
店の扉を開いたら
ふんわり香る
コーヒーの風が出迎えるでしょう
いらっしゃい
笑顔で迎える彼女こそ
パン屋の主人であられます
コーヒーの名を持つ
ほんとは淋しがりな
魔女様です
『ブラック・デ・ウィッチ』
ある日
森の中
魔女のパン屋さんを
見つけたら
扉をそっと開きましょう
ふんわり香るコーヒーの湯気が
出迎えてくれる、かもしれません
いらっしゃい
笑顔で迎える魔女の隣に
あられます彼こそが
黒の名を持つ
可愛く勇敢な
パン屋の魔女だけの
黒猫の騎士様です
にゃ
『星空ピクニック』
キラキラ落ちる星の種
1年回って大地に芽吹く
咲いた花は星の色
きらきら落ちる涙の種
1年前の奇跡は落ちた
咲いた花は星の光
落ちた星が咲く花畑を探しに
ピクニックに行こう
どこにあるかは知らないの
それでもあなたと見たいから
奇跡がもたらす偶然の運命
今日は流転の日
『クローバーの花』
見つけて
幸運のお守りを
あなたのために、あなただけに贈る
幸せの魔法
どこかの森に埋もれたチョウを探して
トンボは高く舞い上がる
辿り着くのは忘却の森
辿り着くのは霧の館
姉妹の魔女は探し続ける
お揃いの幸せを
見つけて
幸運の印を
あなただけが持っている
幸せの魔法
『red eyes』
トントントン♪
トントントン♪
ノックを3回
リズムにのせて
霧の館の扉を叩く
出てきた私はつたない庭師
主は微笑むお嬢様
トントントン♪
トントントン♪
ノックを3回
リズムにのせて
怒った顔したあの人は
館を託して姿を消した
私が知ってるあの人は
怒りで燃えた赤い目に
いつでも愛を灯してた
残った私は泣いていた
置いてかないでと泣いていた
トントントン♪
トントントン♪
ノックを3回
リズムにのせて
一緒にいるわと微笑む少女
その目は赤く幸せ灯す
何も言わずに手を引く彼は
どこかあの人に似ていたの
タンタンタン♪
タンタンタン♪
誰かが駆けてく
軽快に
霧の館へ続く道
あの日あの人去った道
あの日彼も去った道
真っ赤な色した目を持つ民は
理由を隠して扉を叩く
涙と赤を隠して迎える
一人の庭師にあいにいく
恋に気づかず
ただ涙を流す
赤い目をしたあなたはだぁれ
あなたはつたない吸血鬼
『宝石キャンディの夜』
シャラン♪
今宵降り注ぐキラめくあめたち
シャラン♪
今宵舞い落ちるキラめく妖精たち
森から聞こえる足音は
在りし日の命の駆け足
一人、二人
何処かで聞こえる
一人、二人
ほらまた消えた
シャラン♪ シャラン♪
今宵は空から降りてくる
宝石キャンディ
何色だろう
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます