女神ニコールの祝福があらんことを
衛かもめ
第1話
女神ニコールの祝福があらんことを
人間の
わたしの底なしの求知心を満たすためには、永遠の
彼の
私は微笑み、私は歌い、私は踊り、ようやく溢れだしそうな喜びを抑え込み、十字路の中央に立った。鼓動は早まり、顔は火照り、まもなく換骨奪胎の時が来る。
私は
ただ思わなかったことはその代価――一体が
私ながらなかなかいい場所を選んだんだ。
最初には、虹の真下で一羽の鳩が私の肩に止まっていた。それを見た流れ者たちは、神の
流れ者だった人々は、
村の
私の立つ十字路はいま、町の中心広場だ。
町に住む人々は、祖先がここで
彼らは、私を
町の
町の住人が私の足元で
「世界があんなに広かったんだね」
十字路、新月の夜。
少女が何の
「彼が
私がよく知っている少女はこの町で生まれ育った。あの「ウソをつかない目」を私も見たことがある。今日の朝、真正面から見た。
氷結の大地も灼熱の流砂も、果ての無い海原も確かに実在するものだ。
けれど、あの行商人の青年はいったいウソをつくかつかないのか、私には分からない。
行商人の青年は、私に近いどころで屋台を立ち上げた。そこには
立派に見える行商人の青年は、
さて、少女のお目にかかった、もっとも貴重なものは何だろう。
「女神さま、あれは本当に妖精の女王がいただく
妖精の女王がいただく宝冠を、青年は一度だけ見せたことがある。あまりにも惜しみそうに早く納め戻されたから、私もその
「彼は言った。あれは最も貴重な宝物なので、どこで売れたらどこで旅を終わらせると。」
真偽には関係なく、宝冠を人に売れば、彼は安定するための金を手に入れられる。彼の冒険も、そこで
「女神ニコールの祝福があらんことを。彼の旅がここで終わるように」
「彼は今日ね、緻密な錦を売ったんだ」
この日、少女が私の足元で報告した。
そうよ。売ったよ。私も見た。私の目の前で売った。
「彼は今日ね、斬鉄の利剣を売ったんだ」
次の日、少女も私の足元で報告した。
そうよ。売ったよ。私も見た。私の目の前で売った。
「彼は今日ね、輝く宝石を売ったんだ」
三日目、少女はまた私の足元で報告した。
彼女には才能がある。私が無関心だったできことをよりつまらなく話してくれるのが上手いのだ。
最初に財布のひもを解いたのは町の金持ちだった。そのつぎは
私は少女に付き合わされて、宝物の持ち主が変わることを見ている。
残りは、妖精の女王がいただく宝冠だけ。
少女はまた夜中に私の足元に訪れた。
「毎日のように彼を、いや、彼の屋台を見に行っただけなのに、彼は今日急に、宝冠をつけてみたらどうって言い出した」
少女の
「私がまるで妖精の女王そのもののようだ、なんて言ってくれた。私も手鏡に映った自分を見て、いつもより綺麗だとは思ったけど、妖精の女王なんて」
少女は恥ずかし気に笑った。
けれど笑顔は一瞬で消えた。
「宝冠を彼に返すしかない」
十字路、
「隣町の豪商が今日も来た。見たことのない
今日の
広場には豪商の馬車や
「豪商は
見物人たちは騒ぎ出し、皆はこの宝物がどれくらいの値段で売れるのかを知りたい。
「もう一つ、また一つの財布が出されて、豪商の顔もだんだん
当時騒いでいた見物人たちの
「宝冠と同様に貴重な宝物を手に入れなければ、僕は宝冠を手放さない」
宝物が欲しければ、同様に
おそらく、私もその日を見ることができないのだろう。
少女は私の足元でひざまずいた。
「女神ニコールの祝福があらんことを。もし彼はまた旅立つなら、いつまでも元気でいられるように」
ついに、花びらの道の上に、見慣れた顔が現れた。
いつも夜中に私に話しかけるあの少女は、妖精の女王の宝冠をいただき、真っ白なウェディングドレスを身にまとい、隣にいる行商人の青年と腕をつないでいる。
幸せそうな二人が私の前で立ち留まり、
あの行商人の青年は誠実だ。少女は妖精の女王のように綺麗に見える。
隊列に戻り、少女は青年とふたたび腕を組んだ。二人は私の見えないところまで歩んでいく。
二人が末永く幸せにと、私は願う。
どうやら私は、すっかり女神さまの役になれているようだ。
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