第77話

「なぁ、あれ本当に大丈夫なのか………?」





「何がだよ、自律駆動兵ならあれだけ大丈夫だって説明されただろうがよ。えー、グレゴリーだっけか。いい加減しつこいぞ」


「いやグレゴリーは分かった、分かったんだよ。目の前で指鳴らしても平気だったからよ、もう全く怖くねえんだけどよ」


「それは馴染み過ぎじゃねぇか?あれ一応は兵器なんだぞ」


「ほらあの、重装型のグレゴリーじゃなくて後に来た…………機動型の、ほら、アナベルだっけ。あれだよ」


「あぁ、アナベルか。まぁ確かにあれはあれで不気味だよな」


「あれも、おんなじ仕組みなんだよな?」


「基本構造は一応同じらしいが、まぁ言いたい事は分かるよ。アレも中々に気持ち悪いよな」


「グレゴリーはほら、手に指があったりしてちゃんと人型だったんだが………アナベルは何というか、別の意味で不気味なんだよ。腕も四本あるし、そもそも肘から先が全部ハサミみたいになってるんだぞ?隊長じゃねぇけど、夢に出そうだ」


「まぁ、確かに奇妙だよな。重装型みたいにずんぐりしてねぇし、手足もグレゴリーに比べたら骨みたいに細くてよ」


「それに何かあれ、グレゴリーと違って静かに動くから苦手なんだよ。静かなのが不気味って言うか」


「話によれば重量がまるで違うらしいからな。グレゴリー程の重装甲じゃない代わりに、機動力に優れた型だとか。試験じゃ敵に見立てた人形を八つ裂きにしたらしいぞ」


「八つ裂きならグレゴリーも出来るだろ、機動型って要するにどういう事が出来るんだ?」


「あー簡単に言えば、すばしっこいんだよ。あの12フィート近い体躯で、鹿が追い抜かれる様な速度で走るんだ。屋根を走り回るクソレイヴンにも対応出来るそうだ」


「……そんなに早いのか?あれ。あれが走るなんてそれこそ不気味だぞ」


「んで、一応聞いた話には30フィート以上を飛び越えるらしいぞ」


「30フィート!?そんなの……そんなの、其処らの建物の屋根ぐらいあるじゃねぇか!!」


「そういう事だよ。グレゴリーが主人を守る為に存在するなら、アナベルは獲物を逃さない為に存在するんだ。クソレイヴンどもが屋根登って逃げようが飛び上がって追い付いて、八つ裂きにしてくれるって寸法だ」


「あぁ、だから……アナベルはグレゴリーと違って、主人の傍に居ないのか。グレゴリーより、広い範囲を警備してるって事か?」


「そういうこった。まぁ、夜中の歩哨であれに出くわしたら、腰抜かしても無理ねぇと思うがな。無事だって分かってる俺達でさえこうなんだ、レイヴンどもには同情するよ。最後に見る顔があんな機械の頭だなんて」


「……そう言えば、アナベルの頭部も何か変だよな。何であんな形になったんだ?」






「聞いた話だが、あの頭部は鳥類をモデルにしてるらしいぞ。皮肉だよな、鳥が組み込まれて、わざわざ鳥を模した頭を付けられるなんてよ」

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