第55話

 「あのアマ、気に食わねぇな」





 「そう言うな。勘に障るのは分かるが、あんなのでも俺達“ブージャム”の稼ぎ頭だ」


 「金になるのは分かるが、あの女じゃなきゃダメなのか?他の奴に引き継がせる訳には行かない理由は?」


 「あの女は表にとんでもなく顔が利く。ここ最近は特にな。引き継がせるにしても顔を剥がして縫い付ける訳にも行かないだろ、あの女の外面は完璧なんだ。これだけの仕事をしておきながら帝国軍でさえ、あいつに靴磨きの奴隷を融通してるぐらいだ」


 「クソッタレが、大体あいつは何しに来てるんだ?わざわざ俺達に唾を吐きに来なくても金は有り余ってるだろ」


 「自分が数えられないぐらいの金貨が欲しいんだとよ、全くとんでもない女だ。あれだけの立場と金がありながら、其処らの乞食をはね除けるぐらい金貨に餓えてやがる。小便からでも金貨を拾うんじゃねぇか、あの女」


 「あんなのが表じゃ救世主なんだろ?信じられねぇ、人の人生を靴底で擂り潰してウジを沸かせておきながら、平気な顔して記者の前で笑ってるんだぞ。ギャングの俺達より余程腐ってやがる」


 「もうすぐ奴も重役に付くらしい、稼ぎが稼ぎだから当然だがな。殺すなよ、顔が利く以外でもあの女はとんでもなく稼ぐ技術を持ってる。“スナークス”どもにでも嗅ぎ付けられて、殺されたりでもしたら大赤字だ」


 「………対立ギャングに嗅ぎ付けられたら困るってのは分かる。殺されたら困るってのもな。だが、あんなにも囲む必要あるのか?あれじゃ要塞だ。兵士も腕利きも山程取り巻いて、帝国軍でもそうそう手出し出来ないぞ、あんなの」


 「金のガチョウが、金の卵を産んで、金の卵の帳簿を書いて、会計士をやっていたら、お前はそのガチョウをどうする?」






 「城を建ててでも守るだろ?」

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