第29話

 「それで?」





 「デイヴィッド・ブロウズの有力な情報は殆どありません。大した成果無しです」


 「殆ど無し?あれほど目撃情報の束を貰っていただろう、あれはどうなったんだ?」


 「あんなもの、何の意味もありませんよ。上層部が有力情報に賞金なんてかけるから、一般人から浮浪者まで金に眼の眩んだ連中が手当たり次第に目撃情報を投函してくるんです。どれだけまともな情報があるのやら」


 「それを選り分けるのがお前の仕事だろうが、ちゃんとやれ」


 「やりましたよ、何の為に徹夜したと思ってるんですか。暫くは書類なんて見たくもありません」


 「そうか…………なら、結局は今の所ブロウズの肉親の情報しか信憑性は無いな」


 「そう言えばそうでしたね、どうでした?英雄の家族達は」


 「こう言っちゃなんだが……随分と冷淡だったよ」


 「軍部はどこでも嫌われものですからね、仕方ありませんよ」


 「違う、軍にじゃない。デイヴィッド・ブロウズに対してさ。何というか………早く捕まえて処刑なり何なりしてほしい、という感じだったよ。英雄になってからも、金銭以外には殆ど交流も無かったらしい」


 「そいつは……随分な家族ですね」


 「何から何まで、協力的だったよ。読んでた本から学校の成績表まで次々に此方に渡してくるもんだから逆に驚いたよ。元は養子らしいが、仮にも息子に対して随分と容赦無いものだから」


 「まぁ、協力してくれるに越した事は無いんじゃないですか?」


 「それはそうなんだが、何というか、まるで近所の子供の事でも聞かれている様でな。三人兄弟だったらしいが、残った末っ子も淡々としていて…………仮にも自分の兄だぞ?それなのに、“早くあの恥さらしを始末してくれ”だとよ」


 「自分の兄がレガリス中の名誉と安寧を危険に晒していると聞けば、気持ちは分からなくも無いですが…………結局、具体的な進展としてはどうなるんです?」





 「一応、軍から追い出された後の経歴と、交流関係は手に入った。いざとなれば、こいつらを餌にして英雄様を吊り上げるとしよう」

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