第13話

 「だから、何度も言っているようにこの資金は動かせません、ミス・ゼレーニナ」









 「何故です?あの作戦は中止になったのでしょう?ならそれにかかる筈だった費用が宙に浮いている筈です、ウォリナー」


 「子供の小遣いでは無いのですから、そう簡単に貴女にその資金を渡す訳には行かないのですよ。大体資金運用を決めるのは私の仕事です、そしてその資金は、調達班の連中がブラックマーケットで調達したんです。それを余ったから貴女に、という訳には行きません」


 「余らせて運用に悩むより、今ここで決めてしまうのが正解だと思いますよウォリナー。私ならその資金を技術発展に確実に役立てる事が出来ます」


 「ええ、そうでしょうねミス・ゼレーニナ、確かに貴女なら新しい技術や装備を開発出来るでしょう。実績を見るなら、貴女はとても有望で優秀でしょう。ですが幾ら何でも貴女の言う通り払っていては、資金が持ちません。大体資材費も開発費も十分に供給されている筈です、一体あれだけの額を何に使っているんです?」


 「合金の比率を変えようと思いましてね、その為には新しい機器の導入と資材として鋼材が必要なんですよ」


 「合金?合金の比率?部品や駆動機関では無く金属を作るのにあれだけの資材費を使っているのですか?一般鋼材じゃ何がいけないのです、鉄じゃ足りないので?」


 「心外ですね、何も金属だけじゃありません。駆動燃料用と性質実験用のディロジウムの調達にも使っています。何も合金だけじゃありません」


 「……頭が痛くなりそうです、じゃあこういう事ですか?貴女はあの莫大な資材費を、合金開発と、ディロジウムに使っていると言う事ですか?」


 「正確には、部品製造機器や精密加工用機械の一新にも使っています。合金とディロジウムだけの様に言われるのは心外ですね」









 「……………話は終わりです、どうぞお引き取りを。資金運用の方針は此方が決定しますので、悪しからず」

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