#05
私が痴漢にあってから三日後――10月18日は宮原くんの誕生日だ。
これは犀川さん情報だから間違いない。
その日の朝も私は8時10分に家を出た。家を左にちょっと曲がった角のところで宮原くんに出くわす。自転車で颯爽と走って行く彼は、私に気づくこともない。
「宮原くーーーーーん!待ってぇぇぇぇぇ!!!」
私は思い切って声を掛けた。というのも、三日前に借りたハンカチを返さないといけないからだ。
「……?瀧本さん?おはよう」
「おはよう!……この前はありがとう。これ……借りてたハンカチと……。あとね、これ……あげる!!!」
私は青いリボンのかかった紙袋を宮原くんに押し付けた。「あげる」って言った時は、声が上擦っていたと思う。緊張して、動機がして、心臓が口から飛び出すかと思った。顔も随分と赤かったんじゃないかな。顔がほてっている。
プレゼントを押し付けられた宮原くんのぽかんとした顔は忘れられない。
「この前のお礼だから!!!」
私はそれだけ言い捨てると、過去最高記録を叩き出す勢いで自転車を漕いで、その場から逃げ去った。
我ながら不器用だ。変な女だと思われたかもしれない。……というか、思われているに違いない。だって、変な女だもん、仕方がない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます