来年の干支は……〇〇〇です!

ちびまるフォイ

干支を意識することってある?

1年12組の教室にさるが慌ただしく入ってきた。


「おい聞いたか!? 来年から新しい干支になるって話!!」


十二支たちは突然の知らせに驚いた。


「うそだろ!? 新しい干支ができるってことか!?」

「そんな! 今から干支が追加されるなんて……」

「いったいどこのどいつなんだ!?」


「それがわからない。オレも聞いただけだから……」


申の情報を冗談だと笑い飛ばすにはあまりに身近すぎた。

干支たちはお互いの顔を見合った。


「干支が追加されるってことは……干支が一つ消えるってことじゃない?」


「な、なんでだよ!? なんでそんな話になるんだ!」


「だって! 干支がひとつ追加されたら十三支。13なんて不吉だよ!」


「これまで十二支でやってきたのに、急に十三になるわけ……ないだろ」


「そんなのわからないじゃない! 人間界ではもう干支なんか新年くらいしか気にしてない!

 それだけ軽い存在になってるからてこ入れっていう可能性も……」


「あくまで可能性の話だろう!?」


龍は兎の言葉をはねつけた。


「でモゥ、この中で干支をクビになるとしたら……龍だよな」


「はぁ!? なんで俺が!?」


「だって十二支の中で唯一ファンタジーじゃないかモゥ」


「子供人気は抜群だぞ!? 俺がクビになるわけないだろう!?

 むしろ牛こそ不人気だろ!! クビになるならお前の方だ!」


「ボクは家畜としても人間に寄り添っているモゥ!

 ボクがクビになるくらいなら、ネズミのほうがふさわしいモゥ!」


「チ゛ュッ!? ワタチでチュか!?」


「ネズミなんていいイメージないモゥ」


「最近は電気を放つ黄色いネズミや、大きな耳の著作権に厳しいネズミの影響で

 ワタチのイメージはバク上がりッチュ!! カワイイの筆頭ッチュ!」


「それと干支は関係ないのではモゥ」


「ワタチがクビになるくらいならとりのほうがふさわしくないッチュ!」


「コケッ!? なんでミーがそんなこと言われなくちゃいけないッケ!

 ミーがクビになる前に、とらとかいう危険生物のが良くないッケ!」


「あ゛ぁ゛!? こちとら絶滅保護対象だぞゴラァ! 保護されることはあっても、クビにされるこたぁねぇよ゛!!」


申のひとことで始まった干支たちの大げんかはお互いがお互いの悪口を言い合う泥仕合となった。

相手の悪い部分を言うネタが尽きた頃、思えば自分たちが十二支として長く過ごしていたことを思い出した。


「よく考えたら、次の干支はいったい誰がくるんだろうワン」


「え……?」


「ボクら忠実に十二支としてのお役を全うしていたワン。

 そこに1匹が追加されるってことは、よほど干支に入れたい動物が有るってことワン」


「め、メェ~……たとえば何メェ」


「人間界じゃ猫が犬に匹敵する2大人気ペットだと聞くワン」


「猫だって!? おれっちと丸かぶりじゃねぇかあ゛ぁん!!?」


猫の加入に寅は同じ猫科として異を唱えた。


「ヒヒン。龍がいけたんだから、ファンタジーの生物という線もあるブルルルッ」


「ブモッ。となれば……ペガサスとかブモ?」


「それだと私ともろかぶりでしょうヒヒーーン!!」


いのししの予想に対し、今度はうまが猛反論。

むしろ人間という動物そのものが干支に追加されるんじゃないかというぶっ飛んだ予想まで飛び交ったが、ついにそれらしい干支を考えつくことはなかった。

やがて思考はよそ者への嫌悪感と、これまでの仲間たちとの信頼感へと寄っていった。


「結局よ、どんなやつが来たとしても俺たちのやることは一つだよな」


「メェ。ポッと出の新人が干支に追加されるなんておかしいメェ」


「ボクらが一匹でも欠けることはありえないワン!」


「新人を追い出チて、ワタチたちの存在感をいまいちど見せつけるッチュ!」


バラバラだった十二支たちは、新しい干支という敵の前に一致団結した。

そして1年12組に新しい干支が通告された。

人間界では新しい干支としての新年が迎えられる。



「今年も干支はキメラです!」



十二支をすべて合体させたその醜悪な化け物は、

毎年新しい干支を書き起こす年賀状職人の負担を一気に軽くしたという。

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