第55話 最後の光景
「ごめんなあ、もう死ぬしかないんだ」
父が私の首に手をかける。
私は言う。
「最期くらい笑って。私には最後の光景なんだから」
面食らったように手が止まり、父は泣き崩れた。
「お母さんとお兄ちゃんは、俺の酷い顔が最期の光景だったのか」
私が最後の家族。父が泣き止むまで、生を味わうとするか。
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