かくれんぼ

「かくれんぼするものこの指とまれ!」

 まぁ、来るはずが無いんだけどね。

 みんな校庭のどっかに隠れたし。学校の昼休みは30分しかないからね。

「引っかかる奴いるかと思ったんだけどな」

 あたりを見回すが、だれも……いや、いた。

「かくれんぼするー」

 クラス一のおバカが、出てきてしまった。いや、正確にはとっても素直なんだよ。

 この間、まだ算数しか勉強してないはずなのに数学グランプリに出て優勝とかしてたはずだから。頭は、とってもいいはずなんだけど。

「はい、礼二みっけ」

「あ」

 どこかヌケてる。

「それと聡と隆もみっけ」

 なんで礼二の背中に隠れてるんだよ。かくれんぼだよ、これ。ケイドロじゃないんだよ。

 タッチしても無意味だぞ。

 見つかった子たちが教室に帰っていく。残念だったな。長く遊べ……違う!?

 違うぞこれは。

 クラスメイト全員参戦のかくれんぼは昼休み全部を使って一回だけ行われる。

 これは、さっさと終わらせて教室で遊ぶ算段だな!

 聡と隆を見ると、ニヤリと笑っていた。やっぱり。きっと礼二もそんなこと考えて——。

「カレー、残ってるかなぁ?」

 あ、考えてないな。それと給食の時間は終わった。もう食べれません!

「ほかの奴らをさっさと見つけないと……」

 休憩時間が終わる。そう思ったのだが。

「……まさか」

 校庭の隠れられそうな場所を急いで調べる。しかし、どこにも、誰の姿もなかった。

 広い校庭の中から、誰も見つからないのはおかしい。まさか。

「やられた!」

 急いで教室に戻る。しかしそこには誰もいなかった。

「なんで……どこに行ったんだ?」

 再び校庭に戻るがふとおかしいことに気づいた。教室に戻ったはずの隆たちもいなかった。

 何かがおかしい。おかしいと感じているが、とりあえず校庭を調べ続けるしかない。

 だが、遊具は『危険だから』と取り外され、プールも『屋内のほうが管理楽』という理由で校舎の中。木の陰くらいしかない校庭なのに、誰も見つからなかった。

 どういうことだろう。何か見落としているのか?

 そう思ったとき、チャイムが鳴った。くそ、見つけられなかった。

 いったいどこに隠れたんだろうと思っていると。

「はい俺らの勝ちー」

 隆たちが校舎から出てきた。

 そして他のクラスメイトはゾンビみたいにわらわらと。校庭の下から生えてきた。どうなってるんだ。

「いやーさすがに苦労したね」

「難しかったわー。時間足んないし音でばれるからねー」

 どういう、ことなんだ。

「説明しよう!」

 後ろから声が聞こえたので振り返ると、礼二がカレーを食べながら校庭に戻ってきていた。

 おかわり出来たんかい。

「まず、僕たちが先に見つかる。その間みんなは校庭に隠れている。僕たちが教室に帰ったふりをして、下駄箱の隅に待機していたのさ」

「でも、校庭探しても見つからなくて」

「それはみんなで木の上に隠れていたからさ」

 なん、だと。

「ただし、長時間隠れるには不向きだ。だから長時間隠れられる場所が必要だった。そこでこれ」

 礼二がスイッチを押すと校庭がバカっと割れて蓋みたいなのが持ち上がった。

「ち、地下室」

 クラスメイトが全員入っても余裕があるほどの地下室が現れた。

「そう。昇降式にしてあるけど、校庭の土に割れ目が出来るのは避けられない。そこからバレる可能性があった。手動で開けられるように扉もついているからね。したがって、扉を見つけられ、隠れているところを『見つけた』コールされたら一網打尽にされるリスクばかりが高くなる」

「ま、まさか!」

「そう。そのリスクを消すためにあえて、僕たちが外に出たのさ。校庭にいない。つまり教室に戻ってるんじゃないかと思わせるために。そして思惑通り教室に戻った。その隙に校庭に潜り、隙間を消す。僕たちは給食室に行ってカレーを食べる。フフ。完璧さ」

「くそう!」

 カレー残ってたなら食べたかった!

「僕たちがかくれんぼから消えるわけがない。そこを見抜けなかったのが敗因さ!」

 せめて地下室の扉を見つけられたら、勝てたのに!

「明日は礼二が鬼だから、絶対に勝つ」

「負けないよ。絶対に」

 校庭で、礼二とにらみ合う。さすが俺のライバルだ! 次は絶対負けられないぜ!

「おう。授業始まってるんだわ」

 先生に怒られた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る