はじめてのようではじめてじゃないはじめての初詣。(NL)
「寒すぎない?」
真っ暗な中、外に出ると全身を刺すような寒さに襲われて思わず愚痴が口からついて出た。何が好きで年が明けてすぐ外に出なきゃいけないのか。
「冬なんですから寒いに決まってるじゃないですか」
先に歩いていた彼女はくるりとこちらを向いて笑う。
「なんでわざわざ…しかもこんな遅い時間に」
「え…それ本当に言ってるんですか?」
「どういうことだよ」
「だって今日元旦ですよ?」
「え?」
「え?」
顔を見合わせて数秒。彼女は文字通りとび上がった。
「えっ年明けなんですよ!?」
まるでやばい物でも見るような顔でこちらを覗き込んで大声を出す。
「おい、近所迷惑だろ」
そう注意すると彼女はパッと口を押さえた。その仕草が子供みたいで可愛い。
「初詣行ったことないんですか?」
「初詣なぁ…行ったことがないわけじゃないが…別にこの時間には…」
頭をひねって過去を思い出す。自分の初詣の思い出は昼間のものしかない。
「年明けすぐの初詣からの甘酒最高なんですよ!早く行きましょう!」
突然彼女が俺の腕を掴んで走り出した。あまりにも突然すぎて足がもつれそうになる。
彼女と過ごす初めての年明け。初めての夜の初詣の思い出として筋肉痛とほっこりとした甘さが色濃く残るのだった。
(暗転)
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