第22話

 僕は、巨漢の左膝を破壊した。

 さらにロックを極めながら、捻じり切ろうと力を加える。


 だが。



 貫。


 巨漢の上半身のみで放たれた右ストレートの衝撃が僕を貫き、巨漢の身体から僕を引き剥がした。

 身体が吹き飛ばされて、意識をもっていかれそうになりながら、なんとか《ヒール》と《リフレッシュ》を使い、立ち上がる。


 すでに巨漢は立ち上がっており、僕を見下ろしてきていた。

 距離は五メートルほどか。

 左膝を破壊された巨漢は、右脚を軸にして構えをとっている。

 右脚には、僕のローキックのダメージが蓄積しているはずだが。

 左脚よりはマシということなのだろう。


 巨漢が口を開いた。


 「この化け物が……」

 「お前に言われたくないね」


 僕は、巨漢の軸足に攻撃を絞ることにした。

 左手と左足を前に出し、右斜め四十五度のスタンスを作りつつ、時計回りに動く。

 そして、時折、ローキックを放ち、相手を嫌がらせる。

 相手を嫌がらせ続けるしかない!


 

 そう決めて、更にローキックを放とうとした刹那。



 號。

 流。


 巨漢の上半身だけから放たれた右ストレートが、僕を襲った。

 とっさに、左掌でパリィをし、右腕の側面で流す。

 

 両手に感じる衝撃が、右ストレートの威力を僕に思い知らせる。

 まるで大砲のようなストレート。

 その距離を計算し、間合いを測るとどうしても三メートルぐらいになる。

 だが、それでは、僕のローキックが届かなくなってしまう!


 まさに大人と子供。

 圧倒的なまでのリーチ差と、膂力の違い。

 たとえ、左膝を破壊したとしても揺るがない格の違い。


 僕は、呼吸を整えながら、時計回りにステップをしてリズムを組み立てる。

 隙のできる技で不用意に踏み込むと、返り討ちにあう。

 一体、どうすれば攻め崩せるのか。 

 再びローキックで何度か牽制をした後、僕のなかで結論が出た。


 



 肉を切らせて骨を断つしかない。


 僕は、わざと両手のガードを下げて、体勢を低くする。

 それをみて、巨漢が右ストレートを打ち下ろしてきた、その瞬間。


 

 滑。

 振。


 さらに僕は体勢を低くして、滑らかにタックルを入れた。

 巨漢の右ストレートは、僕の頭蓋骨をとらえることができず、頭皮をこそぎとったが空振った。

 

 地面すれすれの位置から、僕の全体重をかけたタックルが成功した。

 僕は、巨漢の右脚を正面から捕らえた。

 軸足に体重を乗せたままだった巨漢の右膝蓋骨は、僕のタックルには耐えれなかった。



 メキキュ。


 僕は、巨漢の右膝も破壊した。


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