第20話
「タナカさまの功績を踏まえ、さるお方からタナカさんを指名しての依頼が入っているんですが……」
モニカさんからは、指名依頼の打診だった。
「面倒くさいから、そういうのいいです」
僕は即座に断った。
そもそも、夜に家を抜け出してやってるトレーニングに過ぎないし。
「は、話だけでも聞いてください。かつて魔王に奪われた聖具の回収に関する依頼なんです」
なんでも、有名な武家に代々伝わっている聖具が魔王城に眠っているとのことだった。
その聖具を機会があれば取り返してほしい。
ただそれだけの話だった。
「僕のメイン狩場は『ラスダン』なので関係ないと思いますよ」
話を聞き終えた僕がそういうと、モニカさんは何故か呆然とした表情で僕を見上げていたのだった。
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『ラスダン』を狩場とする日々が続き、だいぶ奥地まで進んだ。
悪魔族や魔人族との戦いにも慣れて、ほぼ一撃で殺れるようになっていた。
僕は、『ラスダン』の中庭にたどり着いた。
建物の中に突如として、空を望める広場があったのだ。
そこには、僕を待ち構えるかのような、悪魔族の男がいた。
身長は僕と同じぐらいだろうか。
体格差はほとんどなさそうだった。
「……ヨクモ……。許サン……」
そういうと、男は襲い掛かってきた。
斬。
躱。
蹴。
射。
男は手に生えた巨大な爪で切りかかってきたが、僕はそれをかわした。
追撃とばかりに男が蹴りを見舞ってくるが、それにカウンターとして僕は右アッパーを射抜くように打ち込む。
僕が顎を射抜いたので、一瞬、男はひるんだ。
そのチャンスを僕は見逃さなかった。
進。
僕は、タックルをして、男を後ろ倒しにした。
そして、瞬時にマウントポジションをとると、男の両腕を膝で封じ、腰を腹の上に落とす。
「!?」
わずか数秒でマウントポジションに入られたので、男は困惑をしていた。
だが、僕は、容赦なく、両手の底をつかって男の顔面にパウンドする。
拳が当たるたびに男は嫌がり、身をよじるが、僕は逃がさない。
巧みに体重を動かし、徹底的にパウンドを繰り返す。
決まった。
そう僕が思ったときだった。
男は突如としてエビぞりをし、左に身体をねじった。
僕はウェイトコントロールをして堪える。
なんとかマウントポジションを維持し、再びパウンドをしようと右手を振り下ろしたら。
三角締め。
「!?!?」
なぜか、僕の右腕に、男が三角締めで決めていた。
僕の油断の隙をついて、一瞬にして抜け出し、三角締めを決めてきたのだ!
ぐぅ。
立ち上がるが、男の体重の全てがかかって、僕の首が締め上げられる。
このままだとヤバい。
もうあと数秒で意識を落とされる。
僕は、緊急避難的に技を打つ。
パワーボム。
僕は、右腕にぶら下がる男を持ち上げて、僕の全体重をプラスした形でパワーボムを繰り出した。
「グッ……」
男は受け身をとれなかったのだろう。
ひるんだところに、更にパワーボムを僕は打った。
何度も何度も、床に全力をもって叩きつける。
そして、二十分ほどが過ぎただろうか。
男は動かなくなり、僕の右腕から男の身体は離れていた。
僕は、悪魔族の男の死体を《インベントリ》に回収して、更に先に進んだ。
『四天王を全て倒したぐらいで、いいきになるなよ』
タナカのつぶやきが、僕には確かに聞こえた。
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