中編 約束の日?
「はぁ・・・」
「どうしたんだよ溜息なんてついちゃって」
「いや・・・南のことなんだけどな」
「いいよなぁ~ あんな可愛い彼女が居て。何が不満なんだよ」
「い いや不満は無いよ。優しいし料理上手で僕なんかの話もちゃんと聞いてくれるし・・・最高の彼女だよ」
「何だよ・・・ノロケか。独り身の僕への嫌味か?」
「そ そうじゃなくて・・・今週末デートに誘われたんだ。
付き合い始めて2週間だしそろそろ別れを切り出されるんじゃないかってな」
「その件か・・・まだ振られたとかそういうんじゃないんだろ?」
こいつは同じクラスの渋沢。
高校に入ってから出来た僕の友人の1人で嘘告の事もこいつには相談している。
そして僕の本当の気持ちも・・・
「でもさぁ。本当に嘘告なのかな?僕には吉岡さんが無理してお前と付き合ってる様には見えないんだけど・・・」
「僕も最近は正直よくわからなくなってるんだ。演技であそこまで出来るのかなって。たださ・・・普通に考えて南みたいに可愛い子が僕に告白するか?
普段から仲が良いとかならまだしも、会話もしたことも無かったんだぜ?」
「僕に言うなよ・・・それに威張って言うような話でもないぞ」
まぁ確かに自分で言ってても情けないけどさ。
それに・・・仮にだ。仮に南が僕の事を本当に好きだったとしても僕は彼女に釣り合うのか?
南が普段一緒に居る陽キャグループの望月みたいにイケメンってわけでもないし、日吉みたいに運動神経が優れているわけでもない。
強いて言えば成績は上位クラス・・・控えめに中の上なところくらいだよ僕の誇れるところは・・・
南は友達も多いし、明るくてテニスも上手で、クラスでも人気があって・・・
「最近さ、南と一緒にいると周りの視線が何だかきついんだよ。
"そこはお前の場所じゃない","お前なんか吉岡さんにふさわしくない"って言われてるみたいでさ・・・」
「・・・それってただの被害妄想だろ?それに言うほどお前と吉岡さんの組み合わせって悪くないと思うぜ僕は。もう少し自信を持てよ」
「そうかなぁ。。。」
「それに最初の頃はともかく、今はお前も吉岡さんの事が好きなんだろ?
もし嘘告ってことで振られることがあったなら、もう一度お前から告白すればいいんじゃないか?」
「僕から・・・」
「告白しても・・・振られちまうかもしれないけど後悔するよりはいいだろ?」
「そう・・・だな・・・ありがとうな渋沢」
そうだよな。
僕は南が好きだ。周りが何を言おうと関係ない。
この気持ちを伝えられればいいんだ。
例え振られる結果になっても・・・・
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デート当日。
僕は南との待ち合わせ場所であるショッピングモールの入り口に居た。
正直なところデートの誘いに対して軽く"いいよ"と返事をしたものの・・・女の子と2人きりで出かけるのは始めてだ。
昨日の夜は今更ながらに緊張してあんまり眠れなかった。
それに朝出掛ける時も妹に"何々お兄ちゃんデート?"とか言われちゃったし・・・服装そんなに気合入ってたのかな?
などと思いを巡らせていると南が駅の方から走ってきた。
「北斗君!!ゴメン待たせちゃった?」
「え、あ、だ 大丈夫だよ・・・」
やばい。私服姿の南を見るの初めてだけど・・・めちゃ可愛い。
どうしよう。本当に僕が横歩いてていいのか?
「ん?どうかした?」
「い いや南が・・・凄く可愛くて・・・」
「ふぇ!?」
「あ、ごめん何だけキモいよね言い方」
「そ そんなことない!でもこんな人がいっぱいいるところで恥ずいよ」
「ご ごめん。だけど、その、本心だから」
「あ ありがとう。北斗君もカッコイイよ♪」
「・・・・・」
その後、事前に予約をしていた映画を2人で見に行ったわけだけど・・・
南に言われた"カッコいいよ"という言葉が頭の中から離れず、正直ストーリーがあんまり入ってこなかった。
映画は純愛物のラブストーリーだったはずなんだけど・・・
映画を見終わった僕たちは、ランチを食べるべく南が事前にチェックしてくれていたカフェに向かっていた。
なんというか・・・デートしてるよな(当たり前だけど)
隣を歩く南を見ると自然と笑みがこぼれてしまう。
何だか幸せだ。
カフェは昼時ということで混雑していたので入り口の列に並んで待つことになった。
僕らは映画の話や学校での出来事など楽しく話をして盛り上がっていた。
付き合い始めた最初の方こそ会話も緊張ばかりだったけど今では自然に会話も出来ていると思う。
と1組のカップルが僕らに話しかけてきた。
「あれ?吉岡じゃん。星野とデートか?」
「あ、望月君・・・それに千歳」
「あ、どうも」
南が良く一緒に居るグループの望月と船橋さんだ。
確か2人も南と一緒のテニス部だよな。付き合ってたのか?この2人。
望月も船橋さんも気さくな性格で男女ともに人気があり特に悪い奴ではないんだけど・・・僕とはほとんど接点もなく話したことはない。
望月はそんな僕を一瞥した後、聞きたくなかったセリフを南に言った。
「仲良さそうでいいけどさ、そろそろだろ?約束の日」
「あ・・・」
「ちょっと紘一!今言わなくてもいいでしょ!」
約束の日?もしかしてそれって・・・・
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