嘘か本当か・・・

ひろきち

前編 嘘告?

放課後の空き教室。

僕は同じクラスの吉岡さんに呼び出されていた。


吉岡 南。

クラス内でも陽キャグループに所属するいわゆるギャル系の子だ。

見た目も可愛くて学内で彼女に好意を持っている人も多いと聞く。

告白も結構されているようだけど僕が知っている限りではまだ特定の人は居ないらしい。

そんな吉岡さんから呼び出しを受けた。

正直クラスでも目立たない日陰者の僕が何で呼びだされたのか理由がわからない。

無意識に何か気に障ることでもしてしまったんだろうか?

いきなりボコられたりしないよな・・・不安しかないんだけど。


そんな思いを抱きつつ僕が空き教室に着くと吉川さんが椅子に座って僕を待っていた。


「あ、星野君。

 ・・・ごめんね。急に呼び出して」

「別に構わないよ。え~と 話したい事って何かな?」

「あ、あの・・・星野 北斗君。好きです私とお付き合いしてください」

「・・・ふぇ?」


何だか間抜けな声を出してしまった。

いやいやいや。何で吉岡さんが僕に?


「だ だから私と付き合ってください! って駄目かな?」


何だか若干焦ってる気もするけど目を潤ませて僕を上目使いで見てくる。

吉岡さんみたいなかわいい子が駄目とか上目使いで言うのは反則だろ・・・

でも・・・なんで?


「何で?僕に?」

「何でって・・・好きだから」

「いや、僕、吉岡さんと話しした事とかないと思うし接点もほとんどないよね?」

「え~と・・・」


突然の告白。正直訳が分からない。

少しでも接点のある子からならまだしも・・・吉岡さんが僕に"一目惚れ"なんてありえないだろうし。


そんな彼女を見ると僕の返しが想定外だったのか視線を泳がせつつ廊下の方に視線を送っている。

そんな変な事を言ってるつもりは無いけどなぁ~。

悟られないように僕も廊下の方をそっと見ると擦りガラス越しに男女数名の影が見える。

・・・人数的に吉岡さんといつも一緒に居るグループのやつらだよな。

だとすると罰ゲーム的なので僕に最近流行りの嘘告でもさせられてるのか?


いや、嘘告だろうなこれ。そうでも無きゃ吉岡さんが僕みたい何に告白してくるわけもないし、本当の告白なら理由の1つや2つくらい言えるよな。


嘘告とか正直悪趣味だし好感は持てないけど、そもそも僕みたいな底辺が吉岡さんからの誘いを断るのは吉岡さんの立場的にどうなんだろう・・・


「や やっぱり駄目?私の事嫌い?」


何だか今にも泣きそうな顔で吉岡さんが僕の事を見ている。

そうだよな・・・吉岡さんも"仕方なく"僕に告白してるんだよな。

・・・我ながらお人好しな話だとは思うけど罰ゲームに付き合ってやるか。


「う~ん 何だかよくわからないけど・・・僕で良ければ付き合ってもいいよ」

「ほんと!いいの!」


さっきまで挙動不審な感じだったのに僕が"いいよ"と言ったとたん嬉しそうに僕を見つめて微笑んできた。

この笑顔も演技なのかもしれないけど・・・


その日は結局部活があるからと吉岡さんは直ぐに教室を出て行ってしまった。

もちろん廊下にいた男女の影も居なくなっていた。


・・・これで罰ゲーム終了かな?

と思っていたんだけど・・・翌日以降思いがけない状況となった。



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「おはよ!北斗君」

「え、あ、おはよ吉岡さん」

「・・・南って呼んでくれないかな?」

「え?」

「昨日OKしてくれたよね付き合うの」

「あ あぁ」

「じゃいいよね北斗君♪」


僕としては、告白を受けたという事で罰ゲームも終わりで、すぐ種明かしされるか振られるとかするんだろうなと思ってたんだけど、予想に反して翌日以降も吉岡さんが僕に絡んきた。


毎回とは言わないけど休憩時間に入ると僕の席まで来て話しかけてくるし、僕が学食に通いっているのをチェックしていたのかお弁当まで作ってきてくれるようになった。


当然の如く、クラスの空気だった僕のところに陽キャグループでクラスの中でも目立っていた吉岡さんが頻繁に会いに来ているということで、みんなの注目を浴びるようになってしまった。


正直あまり気分のいいものではなかったけど、無視するのも悪いし一応付き合うことになっているわけだしと僕も吉岡さんに合わせていた。


最初の内こそ吉岡さんに対しては"罰ゲームに付き合ってあげている"程度の思いで接していたけど・・・付き合い始めて1週間が過ぎた頃、僕の感情も少し変化してきていた。


派手な見た目に反して真面目で努力家で、毎日僕にお弁当も作ってくれるくらいの料理上手。そして家事とパートで忙しいお母さんを少しでも助けられればと家事全般を引き受けてる優しいところ。


いつの間にか僕は吉岡さんと一緒に居ることや話をすることが楽しく思えるようになってきていて・・・罰ゲームの終わりが来なければいいのにと思うようになってきてしまっていた。


こんな子が本当に僕の彼女だったら・・・

チョロいのかな僕は・・・

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