第123話 新緑

 この季節が、一年の中で一番好きだ。


 新緑の季節。


 まだ淡い新緑の時期に緑に囲まれた木々。

 本当は山の中に行きたかったが、忙しくていけない。

 里山の林の中で我慢することにする。


 この季節。地面から緑の木々にエネルギーが立ち昇っていくような感覚を感じる。


 背中の毛を逆立てていくような。

 血管の中をプチプチと爆ぜるような。


 それは、恐怖にも似た感覚。


 一年のうちにほんの数日だけそういう時期があるのだ。


 雨が降った後は特にすごい。

 土から立ち昇る香りと木々のエネルギーで全身がしびれるほどの感覚。


 その感覚を味わうため、この時期に森や林に入っていくのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る