第378話 メイドこそ最強の従者だと教えて差し上げましょう
何もない部屋にいたシルバーグレーのオールバックが特徴の老執事は、ライト達を目の当たりにしても驚くことはなかった。
「ノーフェイス様の予想通り、無傷でここまで辿り着きましたか」
「爺、いや、
「二つ名はともかく、ノーフェイス様からの呼び名まで存じておりましたか。呼び名は後者にしてもらえますかな? 前者はノーフェイス様だけに使っていただきたいので」
「呪信旅団が僕等を調べてるのと同じように、僕等だって呪信旅団を調べてるのさ」
「なるほど。道理ですな。それで、私の相手はどなたですかな?」
「私です」
自分の相手は誰だと
「
「そうですね。私は個人的に貴方と戦ってみたいと思ってました」
「奇遇ですな。私もです」
「メイドこそ最強の従者だと教えて差し上げましょう」
「違いますな。執事こそ最強の従者です」
アンジェラと
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名前:オルバ=フレースヴェルグ 種族:人間
年齢:55 性別:男 Lv:75
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HP:2,500/2,500
MP:2,000/2,000
STR:3,500
VIT:3,500
DEX:3,500
AGI:3,500
INT:1,500
LUK:1,000
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称号:呪者専属執事
生涯現役
ネームドスレイヤー
胃薬は親友
咎人
二つ名:
職業:
スキル:<格闘術><剛力><偽装>
<器用貧乏><状態異常激減>
装備:スーパー執事服
シザーハンズ
ハイドベルト
ハックグリーヴ
備考:高揚
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(55歳でこのステータスとか嘘だろ)
ツッコミどころはいくつもあったが、ライトが真っ先に目がいったのは
人間50年とは言わないが、それでもヘルハイル教皇国の平均寿命を上回っていたからだ。
ライトが各領地に張った結界のおかげで、最近ではその平均寿命も徐々に延びつつある。
しかし、それでも国内の平均寿命を上回ってなお現役の
ぶっちゃけ、こんなに元気で背筋の曲がっていない老人がこの世にいたのかと言うレベルだ。
この歳でLv75であり、高齢に伴う各種能力値の減少が生じていないのだから”生涯現役”の称号は伊達ではない。
順番にオルバのステータスを見ていくと、次のツッコミどころは”呪者専属執事”に違いない。
アンジェラもこの対極に位置する”賢者専属メイド”を会得しているから、アンジェラとオルバも絶対に負けられない戦いがここにあると思っている。
(”胃薬は親友”・・・。気苦労が絶えないのは同情するよ)
”ネームドスレイヤー”はさておき、その次の”胃薬は親友”の表示を見てオルバが苦労人であることを悟り、ライトはその点だけ同情した。
前世ではブラック企業で社畜として働いていたことから、どうにも苦労人を見ると不憫に思ってしまうのだ。
もっとも、オルバが”咎人”の称号を持っていることから、”胃薬は親友”に同情しても許すことなどないのだが。
そして、称号欄で何よりも注目すべきなのは呪信旅団の文字が入った称号がなかったことだ。
これはニブルヘイムに生きる人達が、呪信旅団はもう終わったと認識していることに他ならない。
そう考えると、
次にスキルだが、特筆すべきものはない。
<偽装>があるから、<鑑定>では閲覧できないという長所も<神眼>の前には意味を成さない。
だが、逆に言えば目立ったスキルもなくここまで強くなったオルバは油断ならないだろう。
そして装備については、
両腕にはシザーハンズ、両脚にはハックグリーヴ、腰にはハイドベルトといった具合だ。
それぞれの
「オルバ=フレースヴェルグ、腕と脚、腰の
「
突然自分のフルネームを呼ばれたオルバは、アンジェラの方が強いと言われたことよりもそちらの方が衝撃的だったらしい。
今までは静かな老執事だったが、自分のステータスが見破られたと判断した途端に全身から殺気を放出して臨戦態勢になった。
(アンジェラのために精神的負荷をかけてやるか)
アンジェラがオルバと戦うのならば、ライトはアンジェラに少しでも有利な状況を作ってあげることにした。
「レベル差があり過ぎて、<偽装>が役に立たなかったんじゃないの? <格闘術>に<剛力>があるから、その年齢にしては大したものだと思うけど」
ライトはLv80であり、オルバとのレベル差は5しかない。
それでも、その事実はオルバが<鑑定>を持たない限り知り得ないのだから、ライトがLv75なんて大したことないという態度でいればオルバを精神的に追い詰められる。
案の定、オルバは執事として
「・・・貴方をノーフェイス様の所に通す訳にはいきませんな」
「私を無視して旦那様に殺気を向けるとは身の程を知りませんね。【弐式:
「なんですと!?」
音を出さず気配も消して距離を詰められ、オルバはどうにかシザーハンズでアンジェラの攻撃を防ぐので精一杯だった。
STRだけで考えれば、オルバは決して劣らない能力値を有している。
しかし、アンジェラの手に握られているのはペインロザリオではなくグングニルだ。
「旦那様、奥様、先にお進み下さい」
「アンジェラ、必ず勝って追いついて来い」
「ここは任せたわ」
アンジェラにこの場を任せ、ライトとヒルダはオルバの奥に見えるドアへと進んでいった。
それを見過ごせるはずがないとオルバは2人の背後から攻撃を仕掛ける。
「通しませぬぞ! 【
「無駄です。【伍式:
オルバが蹴りによる斬撃を飛ばすものの、アンジェラがライト達とオルバの間に割り込み、片手だけでグングニルを高速で回転させてライト達から逸らすように受け流した。
アンジェラが時間を稼いだ隙に、ライトとヒルダは無事にこの部屋から出て行った。
「おのれ小娘が!」
「従者たるものいかなる時も口調を乱すのはご法度です。オルバ、貴方は執事の癖にそんなこともわからないのですか?」
「小娘風情に何がわかるか! 【
「【弐式:
激昂したオルバから放たれる無数の蹴りは、アンジェラの流れる水のような足捌きで1つも当たることなく回避される。
無論、回避だけで終わることはなく、その足捌きを利用してグングニルで斬りつけるのにベストなタイミングを見計らって攻撃した。
だが、オルバだって雑魚ではない。
頭に血が上っていようとも、無意識で致命傷を避けるように動いており、アンジェラの攻撃はオルバの執事服を斬りつけるに留まった。
「小娘、この背広を繕うのにいくらかかると思っているんだ!? 貴重な素材でできているんだぞ?」
「知ったことではありませんね。大体、この程度の攻撃に当たるなんて貴方は本当に執事ですか? ボケ老人の戯言には付き合ってられませんので早々にベッドにお帰り下さい」
ライトやヒルダのように仕える相手や同僚に対し、アンジェラがこのような口撃をすることはない。
口撃するのはアンジェラが明確に敵だと判断した者だけだ。
オルバはアンジェラの口撃に怒りのボルテージが上がり、額に浮き出た血管は破裂して今にも血が吹き出そうに見える。
アンジェラとオルバの口撃の勝負はアンジェラの勝ちだと言える。
いや、そもそもオルバは勝負の舞台にも立てていなかったのは明らかだろう。
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