第314話 駒だよな!? 駒って言おうとしたよな!?
金曜日、アルバスとジェシカはテレスの操縦する
ドゥネイル姉弟が揃って出かけているのは、呪信旅団の目撃証言があったからだ。
ただの団員であれば、アルバスやイルミが出張る必要はないのだが、遭遇した
今も治療院で意識不明の重体の
もっと他にも武器の特徴や服装、顔の特徴や背の高さ等伝えることはあるだろうと思わなくもないが、パッと伝えられる特徴はその2つだったらしい。
逆に言えば、それ以外の特徴を記憶に残させないということになり、その団員が優秀なのかもしれない。
それはさておき、移動中の車内ではアルバスが口を開いた。
「なあ、姉上も来る必要があったのか?」
「愚弟、必要がなければ来るはずがないでしょう?」
「そりゃそうだけど、領主自ら行かんでもって思うけどね。俺の他に誰か付けてくれれば良かったのに」
「相手は油断を誘うのが上手そうですからね。愚弟の抜けてるところは私がカバーします。それと、私の仮説が正しければ、敵は
「その根拠は?」
「『妖艶』と『だが男だ』という生き残った
それを聞いた瞬間、アルバスはジェシカの仮説を理解した。
「呪信旅団の幹部は似た特徴や職業の者を部下にする。そういうことか」
「そうです。やられた
「思わねえ。姉上の予想通り、
「だったら、私が一緒に来た理由もわかりますね?」
「ああ。
「その通りです。愚弟、貴方は替えが利かないこ・・・弟です」
「駒だよな!? 駒って言おうとしたよな!?」
ジェシカのうっかり口にしかけた断片から、何を言いたいのか察せてしまったアルバスはツッコミを入れた。
「細かいことを気にするんじゃありません。イルミに嫌われますよ?」
「大丈夫だ。イルミさんにはライトっていう出来の良い弟がいたんだから、これぐらい全然余裕だ」
「・・・そうでした」
そんな雑談をしていると、御者台からテレスが声をかけた。
「ジェシカ様、アルバス様、前方に手ぶらの女性がおります。
「車を停めなさい」
「かしこまりました」
ジェシカの命令に従い、テレスは
アルバス、ジェシカの順番に降車した途端、その女性が嬉しそうな表情をした。
「その家紋、ドゥネイル公爵様ですよね!? 助けて下さい! 行商の旅の途中にアンデッドと遭遇して逃げて来たんです!」
女性の声はアルトの領域の高さであり、その見た目からして不自然さはなかった。
服装は確かに行商人と言われれば納得する者であり、逃げて来たという言い分に納得できる程度には汚れていた。
「どこから来たのですか? それと、自分を証明できる物はありますか?」
「アルジェントノブルスから来たグラスと申します。証明できる物は、壊された
「【
「なっ!?」
アルバスは突然攻撃したジェシカに驚くが、グラスはそれらを危なげなく躱した。
グラスの顔に観念した笑みが浮かんだ。
「気づかれてましたか」
「バレバレですよ、呪信旅団。グラスも偽名でしょう?」
「その通りですが、どこでバレました? 後学のために教えて下さい」
「私はドゥネイルスペードの人の出入り記録をこまめに確認してます。しかし、グラスなんて名前の行商人はいませんでした」
そこまでジェシカが言うと、グラスの顔が引き攣った。
「嘘でしょう? ドゥネイルスペードは大陸東部で最も大きな領地ですよ? まさか全て記録を覚えてると言うのですか?」
「私、物覚えが良い方ですから」
「そういう次元じゃないでしょうに。まあ、それは良いとして根拠はそれだけですか?」
「背中に隠したタランフランを抜いたらどうです? 背筋の伸ばし方に矯正したような違和感があります」
「フッ、そこまで見抜かれてるならば油断を誘うのは無理でしょうね。であれば名乗りましょう。私は
グラス改め
「オカマ野郎の部下か。じゃあ、イルミさんにぶっ飛ばされた雑魚Aだな」
「誰が雑魚ですって?」
その瞬間、
「【
「【
アルバスの連携技に対し、
最小限の動きで躱してカウンターを仕掛けることもせず、自分の安全を優先して回避に専念したのだ。
「油断してくれないんですね。残念です」
「お前よりも防ぎにくい攻撃を受けたことがあるからな」
「そういえば、ノーフェイス様と対峙して生き残ってましたね」
「そうさ。ノーフェイスと戦って生還した俺をお前が倒せると思うなよ」
呪信旅団の中では、ノーフェイスが信仰の対象ではなくともその実力にあこがれを抱く者が少なくないだろうと言う考えから、アルバスは言葉で
「【
「くっ」
「【
「ぐぅっ」
ジェシカが跳躍しながら突きを放つと、
しかし、STRの値でジェシカに負ける
そして、ジェシカはその勢いが止まる前に前方宙返りの要領で体の向きを変え、地面に
その攻撃もタランフランで防ぐが、
それがチャンスだと思わない者はここにはいない。
「【
「くそっ」
アルバスが自身の手持ちの技の中で発動が速くて威力のある技を放つと、
「あれ、おかしいな。<
その言葉を聞いた途端、
「私を
「まあな。
「【
「【
しかし、
「【
ジェシカがアルバスを囮にし、
「なかなかどうして面倒ですね」
1人ずつなら
そう理解したジェシカとアルバスの戦いもまた、1つの信頼の形なのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます